田中智美“有終”V「横浜の締めは私がって思っていた」

[ 2014年11月17日 05:30 ]

ゴール前の直線でオンゴリ(左)をかわし、1位でゴールする田中

横浜国際女子マラソン

(11月16日 山下公園発着)
 最後の横浜でニューヒロインが誕生した。来夏の世界選手権(中国・北京)の代表選考会を兼ねて行われ、マラソン2度目の田中智美(26=第一生命)が、ラスト勝負を制して2時間26分57秒で優勝。大舞台へ名乗りを上げた。前身の東京国際を引き継ぐ形で09年にスタートした横浜国際は今大会で終了。3位の岩出玲亜(19=ノーリツ)が2時間27分21秒の10代日本最速記録をマークするなど、新星が台頭して歴史ある大会は幕を閉じた。

 思い描いていたフィニッシュとは少し違う。オンゴリとの一騎打ちは、約300メートルの最後の直線へ。一度は前に出られながら、田中がサングラスをかけたまま逆転でゴールに飛び込んだ。「ホントはサングラスを上げて余裕を持ってゴールしたかったけど…」と笑った26歳は「直線の応援が凄かった。トップでうれしい」と充実感に浸った。

 憧れの存在に続いた。第一生命の先輩で、09年世界選手権銀メダリスト、12年ロンドン五輪代表の尾崎好美さんは08年に最後となった東京国際、11年の横浜国際を制した。横浜は今大会がラスト。ロンドン前に尾崎さんの練習パートナーを務めた田中は、ひそかに燃えていた。「横浜の締めは私がってずっと思っていた」。沿道で声をからした尾崎さんも、「後輩が勝ってくれてうれしい」と笑みを浮かべた。

 初マラソンだった3月の名古屋ウィメンズで5位に入り、日本陸連のナショナルチーム(NT)に名を連ねた。今夏、米ニューメキシコ州アルバカーキでのNT合宿に、04年アテネ五輪女王・野口みずきや福士加代子とともに参加。だが、2人についていけずに疲労が蓄積し、一時は今大会出場も危ぶまれた。「練習が怖い」と漏らすほど精神的にも追い込まれたが、山下佐知子監督の「そんなんじゃ駅伝メンバーにも選べない」という厳しい言葉に奮起した。

 山下監督が「一緒に過ごす時間が長いと似てくるのよ!」と言うほど、田中と顔が似ている。91年東京世界選手権で銀メダルを獲った同監督の指導を受ける“山下2世”が、世界切符に前進。「今のタイムじゃ世界と戦っていけない。もし出られたら、どんな選手がいても粘っていきたい」。歴史ある大会のゴールは、大舞台へのスタートだ。

 ◆田中 智美(たなか・ともみ)1988年(昭63)1月25日、千葉県出身の26歳。3月の名古屋ウィメンズで初マラソンに挑戦し、2時間26分5秒で5位に入った。趣味はカメラ、抹茶フード探し。千葉英和高から玉川大を経て第一生命に入社。1メートル54、40キロ。

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