はっけよ~い、止まった??

[ 2008年3月12日 06:00 ]

福田(左)と吉澤(右)は、手をつきあったまま動かず。行司・式守一輝も、少々戸惑い気味に「のこった、のこった」と二人をうながす

 初々しさが招いた前代未聞のハプニングだ。大相撲春場所3日目は11日、大阪府立体育会館で行われ、2日目を迎えた前相撲の一番、福田(15=錣山)―吉沢(15=春日山)は両者とも仕切り線に手を突き、にらみ合ったまま約20秒間“硬直”。立った後は福田が寄り切りであっさり勝ったが、ほとんど相撲経験がない者同士のデビュー戦で取組の勝手が分からず、緊張感も手伝っての珍事となった。

 神聖な土俵を、かみ殺したような笑いが包んだ。人生初の取組に臨んだ2人の新弟子は、仕切り線に手を突いたまま固まった。「はっけよい」と声を発した序二段格行事の式守一輝が異変に気づき、両手で立ち合いを促した。それでも“お見合い”を続ける両者に、しびれを切らして「のこった」と発声。土俵下の藤島親方(元大関・武双山)も「立って!」と声を上げた。20秒が経過し、最後はどちらからともなく立ち上がったが、狛犬(こまいぬ)のような光景が土俵を見守った人々の笑いを誘った。

 今場所で行事生活4年目の式守一輝は「初めてですね。気配がなかったので、小声で“立っていいよ”とは言ったんですけど…。どうしたらいいか分からなかった」と苦笑い。しかし、周囲の困惑をよそに、当事者は真剣だった。この日は前相撲が17番組まれたが、最初の取組とあって2人ともガチガチに緊張。立つタイミングを失った。「緊張した?ハイ…。何で相手は立ってこないんだろうって思いました」。立った後は左を差して右をおっつけて寄り切り、3秒足らずで白星を挙げた福田は首をひねった。

 毎年入門者が殺到し、「就職場所」と呼ばれる春場所。今場所も68人の新弟子が誕生したが、相撲未経験者も多く、福田は全くの素人、吉沢も小学校で経験した程度だった。それぞれの部屋で稽古はしているとはいえ“本番”は勝手が違い、しかも最初の取組だったため、まねをしようにも「お手本」がなかった。

 長時間の“大相撲”を制して力士人生をスタートさせた福田は「恥ずかしかった…。勝った気がしないです」と照れ笑い。それでも、大分市出身とあって「千代大海関のような力士になりたい」と郷土の英雄の名を目標に挙げて目を輝かせた。

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2008年3月12日のニュース