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C大阪スポーツクラブ・風間技術委員長 マラドーナ発掘へ挑戦続ける 指導者の質向上と年齢の壁撤廃で改革

[ 2021年8月24日 05:30 ]

選手たちに指導をする風間八宏氏(C)CEREZO OSAKA SPORTS CLUB
Photo By 提供写真

 かつて川崎Fや名古屋などで指揮を執った風間八宏氏(59)が、C大阪スポーツクラブの技術委員長に就任してから8カ月近くが経過した。主に育成組織における「指導者の育成」を託された同氏は、新たな環境でどんな改革を起こそうとしているのか。現在の取り組みや、これからのビジョンに迫った。

 技術委員長に就任した際、風間氏は元アルゼンチン代表のマラドーナの名前を出し「ワクワクする選手を育てたい」と抱負を語った。今年1月から仕事を始めて8カ月近くが経過した今も、その思いを常に意識している。

 「セレッソで仕事をする理由は、みんなが見たい選手をどんどん輩出したいから。ただ単に“プロになる”という定義ではなく、その選手が、あるポジションで唯一無二の特徴を出せるのが本当のプロ。そのために最も重要なことは、指導者の質と資質を上げること。アカデミーやスクールなどで指導者講習をやって、まず目をそろえることを意識した」

 まず取り組んだのが、指導者の質の向上。そして、幅広く子どもに教えるスクール、優秀な子どもが集うアカデミーにおける指導にも“改革”を起こそうとしている。

 「スクールやアカデミーという言葉はあるけど、その枠を取っ払おうと。なぜかというと、選手を探すのは、もうスクールから始まっているから。スクールはこれぐらいでいい、アカデミーはこうでなくちゃいけない、じゃなく、どんどんパイを広げて“その中から探しましょう”と」

 大きな枠組みから、唯一無二の選手を育成する。より成長を促すためには「年齢」という壁も撤廃する。

 「その次には年齢も徐々に取っ払っていこうとしている。小学生がU―15やU―18に入ることが普通にあっていい。逆にU―18のエースを中学1年のチームに入れて“周りをうまく引っ張って中3のチームに勝て”というタスクを与えることもその子の練習になる。上に上げるだけじゃなくてね。スクールやアカデミー関係なく、試してみたい子どもは、どんどん新しい環境に入れてみればいい。ある意味、それがクラブの強みでもあるから」

 コロナ禍で思うように実現できていない面もあるが、着実に構想は進んでいる。かつては柿谷曜一朗や山口蛍、近年では南野拓実や瀬古歩夢を輩出しているC大阪の育成組織。彼らを追い越すような選手は今後、現れてくるのか。

 「プロの定義は、ただプロ契約をするだけじゃなく、プロのど真ん中で出るということ。18歳でもA代表に選ばれるとか、世界中でもそういう流れになってきている。このチームは、森島社長がつけた背番号8がエース番号で“8番の選手は必ず出てきますよ”と。その8番がいつも出てくるチームなら、高校ぐらいで超人気のチームになっているはず。8番が凄ければ、3番や4番の選手も凄いはずで、そういうチームにしたい」

 風間氏が主に取り組んでいるのが、指導者の育成と構造づくり。完成までの年数を聞くと「10年ぐらいかかるかもしれないけど、土壌を耕すことからやっていかないといけない」とし「100年規模で続くものになっていけば」と語った。真の「育成型クラブ」へ、挑戦を続ける。(西海 康平)

 ◇風間 八宏(かざま・やひろ)1961年10月16日生まれ、静岡県出身の59歳。清水商、筑波大を経てドイツのクラブや広島などに所属し、日本代表でもプレー。現役引退後は桐蔭横浜大や筑波大、川崎F、名古屋の監督を歴任。なでしこチャレンジリーグの静岡SSUアスレジーナのテクニカルアドバイザーを経て、今年1月からC大阪スポーツクラブの技術委員長に就任。

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