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非難は危険、自重も重要 元日本代表監督・オシム氏からメッセージ

[ 2020年5月11日 05:30 ]

スポニチ本紙にメッセージを寄せたオシム氏
Photo By スポニチ

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、先が見えない日が続いているが、元日本代表監督のイビチャ・オシム氏(79)がスポニチに独占メッセージを寄せた。今月6日に誕生日を迎えたが、膝に持病を抱えているものの至って元気だ。ユーゴスラビア内戦を経験した名将は日本の現状に思いを寄せ、コロナ禍で起こる人と人との争いを嘆き、行動を自重する重要性を説いた。

 各国リーグでは韓国のKリーグが無観客で再開したり、ドイツなど再開に向けた動きが進んでいる国もある。とはいえ、なお、世界中ではリーグが中断し、練習さえできない選手も多くいる。観戦できないサポーターはさらに多い。

 「終息してもしばらくはサッカーも他の競技もスタジアムで観戦できないかもしれない。それなら静かにゲームを楽しめばいい。サッカーをスタジアムで見ることも家でゲームをすることも両方、素晴らしい。より、危険が少ないことに興味を持つべきだ。自重も重要だ。多くの行動が危険をはらみ、誰もが危険な存在になっている。新型コロナウイルス感染は極めて危険だし、誰かにうつす危険もある。家族のこと、友人のことをもっと考えてほしい」

 現役時代はユーゴスラビア代表FWとして活躍し、64年の東京五輪では順位決定戦の日本戦で2ゴール。指導者となり、日本代表監督を務めた時も寝る間を惜しんで世界中のサッカーの傾向や戦術を分析した。病に倒れ、オーストリアに戻ってからもボスニア・ヘルツェゴビナ協会の統合に尽力するなど、サッカーを愛してやまない。ただそれも、健康、安全が保証されてこそだ。

 「人類は大きな進化を遂げた。産業は発展し、世界は拡大した。人口も爆発的に増えた。今はそうした状況をどうコントロールしていくかを模索している。そのために自分たちが確固たるものを持っていなければならない。巨額の財産を持った人たちが人々の生活を改善し、世界を進化させたら、ちょっと驚きかもしれない。全ての戦争、全ての危機がなくなり、人々が災いから免れることを心から願っている」

 オシム氏は新型コロナウイルスの早期終息を祈りながら締めくくった。

 「私は新型コロナウイルスの被害は受けていないが、膝が悪く、気温が低い日はちょっとしんどい。薬やワクチンなどさまざまな可能性が語られているが、私にはどれが適切であるのかよく分からない。今はよく寝て、よく休養し、元気でいてほしい。くれぐれも気をつけてほしい」

 ◆イビチャ・オシム 1941年5月6日生まれ、ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)・サラエボ出身の79歳。ユーゴスラビア代表監督としてMFストイコビッチらを擁した90年W杯イタリア大会で8強。03年市原(現J2千葉)監督に就任し、05年ナビスコ杯優勝。W杯ドイツ大会後の06年に日本代表監督となり「ライオンに追われたうさぎが肉離れしますか?」などの「オシム語録」でも注目された。07年11月に脳梗塞で倒れ退任。16年旭日小綬章受章。

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2020年5月11日のニュース