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審判育成 静岡県協会の試みに注目

[ 2017年6月11日 09:35 ]

2014年W杯ブラジル大会の開幕戦を担当した日本の西村雄一主審(右から3人目)ら
Photo By 共同

 【大西純一の真相・深層】審判の技術向上が日本サッカーの大きな課題といわれている中で、静岡県サッカー協会が新たな取り組みを行う。

 同県協会は11年から静岡ゴールデンサッカーアカデミーを主催、今年は8月にジュニアユース選抜のメキシコ遠征を行うほか、15年からスルガカップ静岡国際ユースU―15サッカー大会を開催。今年は10月に海外からチームを招き、静岡県内のチームなどと対戦して育成年代の強化を行う。

 同時にメキシコから指導者を招いて技術指導も行っており、今年もスルガカップに合わせて、2005年のU―17ワールドカップで優勝したメキシコ代表監督だったヘスス・ラミレスさん(60)が大会アンバサダーとして来日する。そして今年は元国際審判員のベニート・アルチュンディアさん(51)も招いて、審判員の技術指導をしてもらうことになった。同氏はアトランタ五輪やW杯ドイツ大会、W杯南アフリカ大会で主審を務めた実績があるほか、96年には来日してJリーグで主審を務めている。静岡県内の審判を中心に審判員の技術を指導し、レベルアップにつなげようという取り組みだ。

 審判員の育成は選手以上に難しい。選手がいい試合をするためにも審判員のレベルアップは欠かせないだけに、日本サッカー界の大きな課題といってもいい。だが、国際審判員の養成は段階を踏まなければいけない。選手のように飛び級というわけにはいかないので10年近くかかる。さらに、近年はJ3の創設などで試合数が増加、大学リーグ、JFL、なでしこリーグなどもあり、審判員の派遣要請が急増、育成が追いつかないのが現状だ。

 サッカーで、子供の頃から審判を目指す人はあまりいないと思う。やはり選手を目指し、どこかで方向転換する人が多いと思う。審判員不足が今以上に課題だった1970〜80年代には日本リーグの加盟チームに対して各チームから一人ずつ審判員候補を出させて“養成”したこともある。そのプログラムで元日本代表選手が国際審判員になった事例もあった。

 そういえば、元日本サッカー協会会長の岡野俊一郎さんも東大卒業後は一時期クラブチームでプレーしながら国際審判員も務めて、国際試合や全国社会人大会で笛を吹いたという。「自営だったから、融通が利くと思われたみたい」と言っていたが、昔から審判員の育成は大きな課題だった。

 そして、育成以上に難しいのがレベルアップ。今回の静岡県の取り組みは面白い。Jリーグや全国の都道府県協会でも、こういう取り組みはプラスになるのではないだろうか。 (専門委員)

 ◆大西 純一(おおにし・じゅんいち)1957年、東京都生まれ。中学1年からサッカーを始める。81年にスポニチに入社し、サッカー担当、プロ野球担当を経て、91年から再びサッカー担当。Jリーグ開幕、ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜、W杯フランス大会、バルセロナ五輪などを取材。

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2017年6月11日のニュース