村井チェアマン 人生成功の鍵は「へこたれない心」

[ 2016年8月9日 12:08 ]

 Jクラブは年間延べにして約5000回(J1、J2)に及ぶホームタウン活動を行っているが、1クラブ平均でみれば平日に週2回を超えるペースで活動を行っていることになる。選手やスタッフ、マスコットや時には社長までもが地域に出向き、奉仕活動をしている以上、私も何もせずにはいられないと思い、時間を見つけては小学校から大学までに出向いたり、少年院で話をしたりしてきた。今回は日本のてっぺんに位置する宗谷地区サッカー協会から講演依頼があり、先週末稚内に向かった。

 実は私にとって悩ましいのは、学生たちへの講演だ。ビジネスマン向けであれば、これまでの経験を生かして話すことは問題ないのだが、学生に対して、ということになると私自身がプロサッカー選手としての経験がないので、正直説得力がない。

 そこで解決策としてJリーグについて徹底的に調べ尽くしてみることにした。リーグスタッフの協力を得て、10年間にわたり活躍した選手の共通資質や能力について、指導者を対象にアンケートを行った。2005年のJリーグ新人選手の代表格は本田圭佑、岡崎慎司、西川周作ら。彼らは一般的には心技体が秀でていると思いがちだが、アンケートの結果、新人時にはそうした面での差はあまり認められず、むしろ「傾聴力、主張力、自己啓発力」といった部分に大きな差があるという結論に至った。これは私にとって新鮮な驚きだった。

 サッカーは理不尽なスポーツだ。90分戦っても1点も入らないことが多々あるし、個人のパフォーマンスがどんなに高くても監督のコンセプトに合わなければ起用されないこともある。自らの意思とは関係なく相手のファウルでケガを負い、シーズンを棒に振ることさえある。

 リオで戦うサッカーU―23日本代表の今がまさにそうであるように、あらゆる場面で心が折れる連続のプロサッカー選手が結果を出し続けるには、自らのプレーヤーとしての技術や能力をどうやって高めていけばいいのかを監督やコーチから徹底的に聞き出し、言われた練習を消化するだけでなく、納得するまで自分で工夫を重ねた努力を続ける。そして時には自分の考えを主張して、その反応を再び傾聴することを繰り返すしかない。

 稚内の講演では、このサイクルをリバウンドメンタリティー(へこたれない心)として伝えた。こうした力は何もサッカーに限ったものではない。ビジネス界の本田や岡崎になろうと思った場合にも必要な能力だ。ぜひとも人生へこたれずに頑張ってもらいたい。

 翌日はコンサドーレOBの吉原宏太君をコーチに、彼らに対してサッカー教室を開催した。雪解けが5月下旬。10月になると低体温症になるほどの稚内。地元の方いわく、珍しいくらい爽やかな初夏の日差しの中、ボールに向き合う彼らに心洗われたひとときだった。(Jリーグチェアマン)

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