【天皇賞・春】四位師、アクアヴァーナルと挑む73年ぶり牝馬V

[ 2026年4月29日 05:00 ]

アクアヴァーナルで天皇賞・春に挑む四位師(撮影・平嶋 理子)
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 水曜企画「G1追Q!探Q!」は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る。最強ステイヤー決定戦「第173回天皇賞・春」は大阪本社・坂田高浩(41)が担当する。アクアヴァーナルを送り出す開業6年目の四位洋文師(53)は騎手時代にG1・15勝を挙げ、調教師としては当レース初参戦。1953年レダ以来となる牝馬での歴史的Vに挑む。「長距離適性」「騎手と調教師の違い」「G1初制覇」の3項目を聞いた。

 【長距離適性】四位師は騎手時代にダービー連覇など輝かしい実績を残し、淀の長丁場G1でも手綱さばきが光った。07年菊花賞をアサクサキングスで制覇。天皇賞・春は18回騎乗し、04年シルクフェイマスと08年アサクサキングスで3着が2回。「難しいよ。長いしね」と苦笑いしながら「京都は最初のコーナーが下りで加速するから、折り合いをつけるのが大変。たいてい行きたがるので凄く気を使う」と騎手目線でポイントを挙げた。

 送り出すアクアヴァーナルは昨年以降、2400メートル以上の長丁場では【3・4・0・0】と連対を外していない。同じ京都の2走前・万葉Sは2番手で折り合い押し切った。「うちの馬に関しては折り合いは問題ない。そこが武器。考えることが一つ少なくて済むのでレースしやすい」と分析した。重賞初挑戦だった前走の阪神大賞典が2着。「勝った馬は強かったけど、この馬なりに脚を使って上手に走ってくれた。あれなら距離は大丈夫。長丁場が合う牝馬。本当に偉い」と手応えを得ている。

 【騎手と調教師の違い】騎手と調教師では視点が異なり、生活リズムも変わったという。「普段は夜8時には寝るかな。乗り役だった時は夜の街に出たりしていたけどね」と早寝早起きになった。レース分析についても「競馬だからほとんどが負けるわけでしょ」と共通点を挙げた上で「(騎手時代は)次はこう乗ろうって考えていたけど、調教師は何が駄目だったかを考えることが多い。この番組で良かったのか調教がどうだったか、牧場から厩舎に戻す日程はここで大丈夫だったかとか」とあらゆる角度から敗因を探る。

 さらに「いまだに難しい」と口にするのが騎手への指示の出し方だ。「点じゃなくて線だから」と将来につながる競馬をしてほしいとの思いがある。「若手からベテラン。感覚で乗る騎手には軽いニュアンスで伝えた方がいいだろうなとか。開業当初は結構、細かく言っていたけど今はそこまで」という。今回のアクアヴァーナルは松山との初コンビ。「考えてくれているしね。(伝えるのは)癖ぐらいかな」。桜花賞→皐月賞に続くG1実施機会3連勝が懸かる鞍上に信頼を寄せている。

 【G1初制覇】開業6年目でJRA重賞7勝。昨年はキャリアハイを更新する年間36勝を挙げた。「自分一人じゃない。厩舎スタッフがいて、その家族もいて。みんながいい仕事をして稼いでほしいから。貧乏にさせるわけにはいかない」と責任感をにじませる。前年以上の成績を意識しつつも、目標としては掲げない。「僕は指揮官だから戦略として考えるけど焦らせたくない。(元調教師の)藤沢和雄さんも小さいことの積み重ね、とよく口にされていた。馬って急には良くならない」と立ち位置を見極めている。

 管理馬のJRA・G1出走は14度目で、これまでは24年チャンピオンズC(ハギノアレグリアス)の4着が最高着順。待望のビッグタイトルにも「厩舎の士気は上がるし、みんなの喜ぶ顔も見たいけど割と冷静。そこは騎手をやらせてもらっていたからかな」と自然体だ。「勝負事だから運気は絶対ある。チャンスの時につかめるかどうかは、普段の仕事をどうやってきたかにかかっている」と万全の態勢で送り出すことに集中している。

 騎手時代にダービー初制覇を飾った07年ウオッカは64年ぶりとなる牝馬での勝利だった。アクアヴァーナルが勝てば1953年レダ以来、73年ぶり2頭目の牝馬Vとなる。トレーナーとしても歴史に名を刻むか。

 【取材後記】四位師は調教師の職業について「楽しいよ」「いい仕事です」と充足感を繰り返し口にした。管理馬の体調管理など気が休まる時間は少なく、思うように事が運ばない苦労も日常だろう。それこそが醍醐味(だいごみ)と言わんばかりに「あと10年早くやっても良かったかなと思っている」と続けた。「今が53歳だから(70歳定年制で)あと17年しかない。ダービーにチャレンジできるのも多くて17回。クラシックを考えると少ないって思うでしょ」と意欲にあふれている。
 騎手と調教師の両方でのダービー制覇は87年メリーナイスを管理した橋本輝雄さんが最後。達成すれば、とてつもない偉業となる。“名選手は名監督にあらず”はよく聞くフレーズ。競馬なら名騎手は名調教師にあらずとなるが、近い将来にはと感じるほどのエネルギーが四位師から伝わってくる。「騎手の後輩たちに調教師の仕事って楽しそうだな、やりたいなって思ってもらえるような調教師になりたい」。自身の職業に誇りを持ち、日々の馬づくりに全力でまい進。その姿をこれからも注目していきたい。(坂田 高浩)

 ◇四位 洋文(しい・ひろふみ)1972年(昭47)11月30日生まれ、鹿児島県出身の53歳。91年に古川平厩舎から騎手デビュー。07年ウオッカ、08年ディープスカイでダービーを連覇するなどJRA通算1万3919戦1586勝(G1・15勝、重賞76勝)。20年に調教師免許を取得し、21年3月に開業。23年シリウスS(ハギノアレグリアス)でJRA重賞初制覇。JRA通算1164戦119勝(重賞7勝)。

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