【宝塚記念】池水助手が信じた!ジャスティンパレス成長の軌跡 ドバイ遠征でさらに進化
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春G1シリーズの水曜企画は「G1追Q探Q!」。担当記者が出走馬陣営に「聞きたかった」質問をぶつけて本音に迫る。「第65回宝塚記念」は大阪本社のオサム(59)が担当。昨年の天皇賞・春で初G1制覇を成し遂げ、それ以降ハイレベルの争いを続けてきたジャスティンパレスの成長の軌跡と完成度に迫る。担当はかつて20年3冠牝馬デアリングタクトを手がけた池水健児調教助手(40)。名馬の陰に名仕上げ人あり。3つの時期で追う。
ジャスティンパレスの強さは底知れない成長力にあった。2歳暮れのG1ホープフルSで◎を打ち、翌年正月紙面で「22年のダービー候補」に指名した。だが、陣営の視線はクラシックではなく、先に向いていた。池水助手は「素質のあるいい馬だなと思いましたけど、2歳の頃はまだまだ頼りなかったですね。新馬から黄菊賞と連勝しましたけど、能力だけで勝ったような感じ。精神的にも幼かったです」と振り返る。
深謀遠慮(深く考えを巡らせ、遠い先のことまで見通して周到な計画を立てること)とはこのこと。デビュー戦の馬体重が444キロで見た目にも華奢(きゃしゃ)。陣営はこの時点で目標をクラシックではなく、古馬になってからの戦いに置いたというから驚きだ。
3歳時は皐月賞から始動、有馬記念まで5戦に制限したことからもそれが理解できる。決して追い込むことなく、なおかつ大舞台を経験させることで場数を踏ませて成長を促した。飛躍の時へ、下準備ができた。
ジャスティンパレスの転機は4歳初戦の阪神大賞典だった。前年の有馬記念から馬体重は16キロ増。池水助手は「体重が増えて馬が変わった。ひと回り大きくなって帰って来てくれました。(走る馬は)やはりどこかのタイミングでガラッと変わりますね」と細身に映った馬体は縦横に伸展した。この体でネジ伏せた前哨戦が初G1制覇となった天皇賞・春の圧勝劇に結び付く。その年の有馬記念では自己最高の馬体重となる474キロ。デビュー時からちょうど30キロ増えた姿に「1年前とはまるで別馬です」と感嘆の声を漏らした。
池水助手は20年牝馬3冠デアリングタクトも担当していた。この馬は3歳秋に成長が訪れた。オークスで466キロだった体はひと回り大きくなり、秋華賞はプラス14キロの480キロ。見違えるほどのたくましさ。その秋華賞は位置取りから苦戦を強いられたが、それを克服して勝ち切れたのは成長した肉体が備わっていたからこそ。栄光をつかんだ。
ジャスティンパレスの1週前追い切りは久々にルメールがまたがった。パンプアップした前腕を報道陣に見せて「疲れたよ」と笑った。手綱からほとばしるパワーを実感した。5歳で肉体的には完成域。もう一段成長したものがある。それが精神面。3月にドバイシーマクラシック(4着)で初の海外遠征を経験。池水助手は「僕はケガでドバイには一緒に行けなかったんですが、帰って来て明らかに変わりました。精神的にどっしりしています。落ち着きが出ましたね」とさらに進化を感じ取った。
海外遠征でひと皮むける馬がいる。リスグラシューなどはその代表。香港、豪州と渡り歩いて地力強化。それが引退レースとなった19年有馬記念の圧勝劇に結実する。検疫、長時間の空輸、不慣れな環境、異質の気候、強敵相手にタフなレース。さまざまな試練が馬を強くする。ジャスティンパレスも明らかに変わった。たくましく、いい意味での“ずぶとさ”を身につけた。一新紀元。新たなる時代へ。引退した世界No・1ホース・イクイノックスに代わって最強を証明する。
◇池水 健児(いけみず・けんじ)1983年(昭58)9月6日生まれ、愛知県出身の40歳。名城大卒業後、北海道浦河町の三嶋牧場を経てJRA競馬学校へ。12年栗東・梅内忍厩舎、16年に日吉正和厩舎の解散に伴い、新規開業の杉山晴紀厩舎へ。
【取材後記】物静かで職人肌の池水さんも愛娘・凛ちゃんの話になると、パッと明るく父親の表情になる。デアリングタクトがデビューした19年に誕生した凛ちゃんも4歳。今ではテレビの前でパパの馬を応援してくれているそうだ。「まだ乗せたことはないですけど、本人は“馬に乗りたい”と言っています」とほほ笑む。池水さんは子供のころ騎手を夢見ていたが、視力が悪くかなえられなかった。数多くの女性騎手が活躍する令和の時代。夢も現実味を帯びてくる。「危ないですからね」と表情を引き締めたが「そこは本人次第ですね」。愛娘が騎手となりデアリングタクトやジャスティンパレスの血を受け継ぐ馬に乗る。いつかそんな日が来るかもしれない。 (オサム)
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