【日本ダービー】“王国復活の使者”社台F・吉田照哉代表 ソールオリエンス含め「三本の矢」に期待!

[ 2023年5月24日 05:30 ]

G1ウイーク「時の人」

社台ファームの吉田照哉代表
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 G1出走馬関係者に迫る企画「時の人」。日本ダービーに皐月賞馬ソールオリエンスをはじめ、ベラジオオペラ、シャザーンを送る社台ファームの吉田照哉代表(75)にスポットを当てた。今年は既にJRA・G1・2勝、ドバイのUAEダービー(デルマソトガケ)も制すなど“社台ファーム王国復活”の力強い蹄音が国内外で響き渡っている。10年エイシンフラッシュ以来、13年ぶり6頭目のダービー制覇に挑む“三本の矢”への熱い思いに迫った。 

 ――今春は皐月賞に続いてNHKマイルC(シャンパンカラー)も優勝。社台ファーム生産馬の近年の国内外での活躍は目覚ましいものがあります。
 「凄く走っているんですよね。おかげさまで。みんなが一生懸命考えてやってくれています。それがまず一番だと思います」

 ――好調の要因。いろいろあると思います。
 「山元トレセンの施設を変えて坂路を延ばしたり、急こう配にしたりとか。あとは普段のウオーミングアップもじっくり時間をかけ、1頭にかける時間が長いということでしょうか。調教というと速いところをどれだけやったと思いがちですけど、逆に人間と馬とのコンタクトが大事ということに改めて気付きましたね。みんながいろいろと考えてくれているんです」

 ――細かい配慮ですね。
 「1頭ずつ違うんですよね。調教をやり過ぎると駄目な馬もいれば、もっとやらなければ駄目な馬もいます。そういう見極めを、馬を世話している人たちが凄く観察していますね。いろんなことの積み重ね。当歳から夜間放牧をきっちりやる。前田幸治さんのノースヒルズが取り入れているということで、うちも見習ってやっています。GPSを着けると、雪の中でもちゃんと歩いているんです。もちろん、全ての馬がそれに対応できるわけではないので、そのあたりは厩舎の人が見極めて…。真冬の前にちゃんと食べさせて、体調を良くする。もちろん、繁殖もずっと変え続けています。一つだけでなく、いろんな積み重ねが結果につながっていると思います」

 ――今春はドバイでデルマソトガケが、UAEダービーを制しました。幅広い分野で活躍しています。
 「ダートでは大井の(南関東牝馬クラシック2冠目の)東京プリンセス賞を勝った(社台ファーム生産の)サーフズアップも、物凄く強かったですね。ドレフォンの子で距離はもたないと思ったら、1800メートルで楽勝でしたから。この先が本当に楽しみです」

 ――日本ダービーです。一番の思い出は?
 「牧場では、子供が生まれていい馬だったら、ダービーにいけるといいなと、みんな思うわけで…。一番の目標ですよね。最初に勝った時のダイナガリバー(86年)は感激しました。それまで1回も勝っていなかったので…。テスコボーイの系統やパーソロンなど、うち以外の種牡馬が既に勝っていて(ダイナガリバーの父の)ノーザンテーストがいたからこそ、ダービーを勝てたんだ…。そう感慨深かったのを覚えています」

 ――今年は有力馬3頭での挑戦。何と言っても皐月賞を制したソールオリエンスです。
 「断トツ人気になる感じですからね。馬の調子も凄くいいみたいです。皐月賞は横山武史君が下りてきて“これは化け物だ”と言っていましたから。乗っている人が驚くのだから、我々はそりゃ驚きますね。これまで携わってきた人は、みんな素晴らしいと言ってきた馬なんです」

 ――道悪の最内枠。楽ではなかったと思います。
 「そうですね。外に出すためには1回後ろに下げなくてはいけないということだったけど、しかも中山のコースで、4コーナーで一番大外回りで。よく届いたと思います。本当に」

 ――距離延長は望むところ?
 「母父のモティヴェーター(05年英ダービー)はもちろんですけど(母母父の)クエストフォーフェイム(90年の)も英ダービー馬で、この母系はみんな距離が長いんです。ダービーの方がこの馬に合っていると思います。(秋に)菊花賞にいったら、もっといいんじゃないかな。お父さんのキタサンブラックは菊花賞を勝っていますしね。お母さんの方は絶対距離はもつので、その点は万全だと思っています。血統的には…。競馬だから何が起きるか分からないですけどね」

 ――シャザーンは21年セレクトセール1歳セッションで2億4200万円(税込み)で落札。お母さんのクイーンズリングも現役時活躍した。
 「素晴らしい馬体で完璧という馬でした。ソコソコ走っているけど、ここにきてだいぶ実が入ってきたらしいので…。皐月賞(6着)の時より体力は絶対上がっている雰囲気を感じています、我々は。なので着順は上がります、たぶん。いいところを走れる気がします。金子(真人氏)さんはやっぱりうまいですよね、買うのが。勘がいいんでしょうね」

 ――ベラジオオペラは千葉サラブレッドセールの出身。
 「これはセールでも時計も良かったし(デビュー後も)よく走っていますね。皐月賞は結果的に前に行った馬に厳しい流れ。母系(3代母がオークス2着のエアデジャヴー)は凄くいいし、距離もそんなに短距離という馬ではない。自在な馬で乗りやすくてね」

 ――ソールオリエンスがクラブ所属馬で、2頭は異なるセール出身です。
 「それが一番うれしいですね。なかなかやろうと思っても、できないことです。生産馬の半分以上はセリに上場しているので(クラブ所属馬と)両方走ってくれないと困るんでね。全体的に牝馬も走っているし、言うことないです。牧場がパワーが付いていると思います。みんな頑張ってくれるといいですね」

 ≪10年エイシンフラッシュ以来6頭目の頂点へ≫社台ファームの生産馬はこれまで5頭が優勝。初優勝は86年ダイナガリバー。社台ファームが導入した父ノーザンテーストは82年から種牡馬リーディングの確固たる地位を築き、86年時点で天皇賞・春、有馬記念など大レースを勝っていたが、ダービーは初めてだった。95年は照哉氏が購入したサンデーサイレンス産駒のタヤスツヨシが産駒1世代目からダービー制覇の快挙。2着ジェニュインも同産駒&同ファーム生産のワンツーだった。00年アグネスフライトはデビュー27年目の河内洋(現調教師)がダービー挑戦17度目で悲願Vのメモリアルレース。03年ネオユニヴァースは皐月賞に続く2冠。当時短期免許で騎乗していたミルコ・デムーロは外国人騎手として初のダービー制覇を飾り、感涙した。10年エイシンフラッシュは皐月賞3着で7番人気ながら、上がり3F32秒7の驚異の末脚でV。公営・大井出身で08年からJRA移籍した内田博幸は日本ダービー制覇を果たした。

 ◇吉田 照哉(よしだ・てるや)1947年(昭22)11月12日生まれ、千葉県出身の75歳。慶応高、慶応大経済学部では馬術部。大学卒業後に父善哉氏が経営する社台ファームに入社した。名種牡馬サンデーサイレンスを導入し、日本競馬界の発展に多大な貢献をしてきた。千津夫人もクイーンズリング(シャザーンの母)などの馬主。息子の哲哉氏は社台レースホース代表。弟の勝己氏はノーザンファーム代表、晴哉氏は追分ファーム代表。

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