【高松宮記念】ナムラクレア100点 一流スプリンターの体形に“枝変わり”

[ 2023年3月21日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

ナムラクレア
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 一流スプリンターへ“体形変わり”だ。鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。春のG1開幕戦「第53回高松宮記念」(26日、中京)ではナムラクレアに唯一満点をつけた。達眼が捉えたのは桜の“枝変わり”のように急激にふくらんだ肩の筋肉。4歳春に開花を告げる馬体だ。

 今日は彼岸の中日。つくば市内の拙宅から筑波山麓まで足を延ばすと、ソメイヨシノに先駆けてヒガンザクラが咲き誇っています。見上げれば、2センチほどの淡紅色の花びらに交じって倍の大きさの白い花弁をつけている枝がある。加齢とともに一本の枝に突如として形や色の違う花を咲かせる「枝変わり」です。樹木は先へ先へ成長するため一本の新しい枝先に遺伝的な形質が突然現れるそうです。

 この枝変わりは競走馬にも時々起こる。例えば、古馬になって体形が急激に変化したナムラクレア。昨秋のスプリンターズS(5着)時には線の細い馬体でしたが、首から上腕にかけて別馬のような力強い筋肉をつけている。一流スプリンターらしい体つきになってきました。前走・シルクロードS(1着)では馬体重472キロ。前々走・スプリンターズS(466キロ)から6キロ増えていた。体つきは数字以上にたくましくなっています。

 4年前のスプリンターズSを制したタワーオブロンドンを思い起こさせる変化です。3歳春当時はマイラーを思わせる体形でしたが、古馬になって肩に厚い筋肉をつけたスプリンター体形へ。加齢とともに枝先ならぬ肩先にスプリンターの遺伝的な形質が現れたのです。父(ミッキーアイル)、母(サンクイーン2)とも短距離系のナムラクレアが古馬になって示した変化も枝変わりならぬ一流スプリンターへの体形変わり。昨年のスプリンターズS出走馬との再戦になりますが、上積みは一番大きい。

 3歳時と同様にハミを着けずモグシ(簡易頭絡)だけでゆったりと立っています。桜の花見でもしているように顔つきも穏やか。牝馬でもカリカリしていない立ち姿はとても頼もしく写ります。冬毛が残りやすい春先の牝馬にしては毛ヅヤも良好。毛の長さが目立つメイケイエールとは対照的です。牝馬だけにフックラした腹周りにも好感がもてる。

 ヒガンザクラのように一流スプリンターの馬体に枝変わりしたナムラクレア。彼岸が明けた今週末の中京競馬場でも咲き誇るかもしれません。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2023年3月21日のニュース