【川崎】騎手紹介⑮厩務員を経て再デビューした阪上は人生を“エンジョイ”している

[ 2022年1月31日 12:00 ]

人生を“エンジョイ”している阪上忠匡
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 いったんは諦めた夢を、川崎でかなえたのが阪上忠匡(38)だ。

 03年に笠松競馬でデビューした阪上は、カキツバタロイヤルなどで重賞通算8勝を挙げるなど活躍した。だが、27歳だった11年1月に騎手を引退した。「どんどん不景気になって売り上げや賞金も減っていて、手当では食べていけなくなっていた」。当時浮き彫りとなっていた地方競馬の経営悪化を受け、ムチを置くことを決断した。

 第二の人生として選んだのは厩務員だった。「競馬場に来て就いた仕事というのは騎手。他の仕事も知っていたつもりだったんですけど、やってみたらその職業(厩務員)の面白さがあると思いました。やらずに知っているつもりになるよりも、やってみてそういうものだなと知ることもありました」。大井で約4年、仕事を続けてから川崎に移籍。そこでやり残した思いがふつふつと湧いてきた。

 騎手になる際は南関東で騎乗したいと考えていたが、当時は受け入れ先がなかった。技術研鑽(けんさん)騎手として引退直前に大井競馬に所属したことがあったが「また大きいところで乗れたら」という思いは忘れられなかった。「川崎に来て話を聞いたらチャンスがあるということだったので。最後にここで乗ってみたいなと思いました」。18年3月、騎手免許試験を受けると一発合格。7年ぶりの騎手復帰を果たすと、19年5月にゴールドホイヤーで8年4カ月ぶりの勝利を挙げた。

 「馬がいい状態でレースに出られるかどうかは厩務員の技術によるところが大きいです。もちろん一番の責任者は調教師ですけど、馬を管理して世話をしているのは厩務員。騎手をしていても、この厩務員さんがやってくれたら馬が良くなってくれるというのはある。頑張っている厩務員さんの馬には乗りたいとは思いますね」。いったん騎手から離れたからこそ、見えてくることもあった。

 阪上がスローガンにしているのは「エンジョイ」だ。「僕は人生を楽しんで生きている。後輩からは〝何をやっているんですか〟とか言われますけど」。与えられた騎乗をしっかりとこなすのはもちろん、私生活も大いに満喫している。趣味はバスケットボールとイラストを描くこと。「NBAはよく見ていますね。川崎ブレイブサンダースはチャンネル登録もしています」。東京五輪の女子チームは熱烈に応援し、銀メダル獲得に「感動した」という。テレビ観戦だけでなく、自身もプレーするなどアクティブに動き回っている。

 川崎競馬の騎手になって感じたのは「ビックリしたんですけど騎手同士みんな仲がいい。いがみ合っている競馬場はないのですが、ここまでみんなでまとまっている競馬場はないですね」ということ。

 通算200勝まで残り2勝に迫っているが「あまりこだわっていない」という。騎手の魅力については「馬に関われることですね。動物が好きなので。騎手は特殊なので、いい経験ができているなと思います」と語った。騎手であることに感謝しながら、阪上はレースに臨んでいる。

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2022年1月31日のニュース