【セレクトセール迫る】ディープ4頭、キンカメ不在…「個体の能力を見抜く眼力」が求められる新時代へ

[ 2021年7月8日 07:00 ]

2019年のセレクトセールで4億7000万円の値が付いたタイタンクイーンの2019(父ディープインパクト)
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 来週の12日と13日、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで「セレクトセール2021」が開催される。19年に死んだディープインパクトの最終世代は4頭が上場されるが、同じくキングカメハメハの産駒は不在。多くのバイヤーにとっては、実質的に両巨頭“ディープインパクト&キングカメハメハ”の産駒が不在となった最初のセレクトセールとなる。

 多くのバイヤーの視線は、次のリーディング候補に向けられるのだろう。候補は絞られる。本命級は2頭。繁殖牝馬の質でリードするロードカナロア、芝ダートや距離を問わないキズナの2頭だ。これに続くのが、ダートでの不振が(リーディングを狙うには)痛いものの、大物を次々と輩出しているエピファネイア。そしてノーザンファームの強力なバックアップを受けるモーリスだろう。ただ、多くの馬主は“リーディング種牡馬の産駒”を探しているわけではない。求めているのは“走る馬”だ。

 ここで時をさかのぼる。サンデーサイレンス産駒が不在となった1年目の07年、および2年目の08年のクラシックレースの勝ち馬(父)をチェックしたい。

 【桜花賞】07年ダイワスカーレット(アグネスタキオン),
08年レジネッタ(フレンチデピュティ)

 【皐月賞】07年ヴィクトリー(ブライアンズタイム)、08年キャプテントゥーレ(アグネスタキオン)

 【オークス】07年ローブデコルテ(コジーン)、08年トールポピー(ジャングルポケット)

 【ダービー】07年ウオッカ(タニノギムレット)08年ディープスカイ(アグネスタキオン)

 【菊花賞】、07年アサクサキングス(ホワイトマズル)、08年オウケンブルースリ(ジャングルポケット)

 一目瞭然、種牡馬がバラエティーに富んでいることが分かる。つまりは“超戦国時代”だったのだ。リーディング2桁の種牡馬からもクラシックウイナーが出ている点は興味深く、ディープとキンカメが去った2年後、3年後のクラシックも同じ状況になる可能性が高い。

 ある馬主は「これからは“個体の能力を見抜く眼力”が求められる」と腕をぶす。サンデーの時代、ディープの時代は、それぞれの産駒を買っていれば、当たりを引くことができた。しかし、これからは違う。「抜きん出た種牡馬がいないから、どこに当たりが潜んでいるか分からない。○○の産駒だから…で当たりを引くことはできない」。だからこそ、1頭1頭の“個体の能力”を見抜く眼力が問われるのだ。

 チャンスは誰にでもある。昨年、無敗で牝馬3冠を達成したデアリングタクトは、17年のセレクトセール当歳で主取り、翌18年の1歳で1200万円(税抜き)で取引されていた。最近の重賞勝ち馬を見ても、セレクトセールで2000万円以下だった馬は数多くいる。

 列挙すれば、昨年の福島記念覇者のバイオスパークは15年当歳で1600万円、同じくステイヤーズSを制したオセアグレイトは17年1歳で1550万円。さらに今年のフラワーCを制したホウオウイクセルは19年1歳で1600万円、同じく弥生賞覇者のタイトルホルダーは18年当歳で2000万円。そして重賞2勝を挙げるタイセイビジョンは17年当歳で1800万円だった。意外に思われるかもしれないが、2000万円以下で取引された牡馬からも、多くの重賞ウイナーが出ているのだ。

 どうしても高額取引馬に注目が集まるセレクトセール。しかし、馬主や調教師が目を凝らすべきは、もっと低価格帯の馬なのかもしれない。1000万円台、2000万円台で取引された馬の中から、2年後、3年後のクラシックウイナーが現れる可能性は大いにある。彼ら、彼女らの将来性を見抜く力こそ、ディープ&キンカメ不在の新時代で“成功”するカギになるに違いない。

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