【フェブラリーS】アスコット100点!右大臣ばり“武骨”まさにダート体形

[ 2020年2月18日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

<フェブラリーS>まさにダート体形!!重厚な筋肉がついているモズアスコット
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 桃の節句より一足早く訪れる砂の節句を飾るのは、雛(ひな)壇の中で異彩を放つ右大臣の武骨さだ。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。今年最初のG1「第37回フェブラリーS」(23日、東京)では根岸Sをダート初挑戦で快勝したモズアスコットに唯一満点をつけた。達眼が捉えたのは切れよりも馬力が勝るダート体形。有力候補のボディーを雛人形になぞらえながら解説する。 フェブラリーS

 明日は二十四節気の一つ「雨水(うすい)」。雪がゆっくりと解け出して田畑に潤いを与える、春の兆しが漂う季節。昔から雨水に雛人形を飾ると、良縁に恵まれると言われています。2週後に桃の節句を控え、デパートの特設会場に雛人形が所狭しと並ぶのも今の季節。シンプルな親王飾り(男雛と女雛の2体)や三段飾り(三人官女を加えた5体)が売れ筋らしいが、豪華なのはフルメンバー15体が勢ぞろいする七段飾りです。魔よけの赤い毛氈(せん)の最上段に並ぶのが上品で優しい顔立ちの女雛、男雛。対照的に武骨な顔をのぞかせているのが4段目の随身(左大臣、右大臣)です。矢を背負い、弓を手にした右大臣は身を挺(てい)して御所を守るSP役。あでやかな毛氈の上でいかつい姿が異彩を放っています。

 美しいターフホースとは対照的に右大臣のようないかつい姿を見せる競走馬といえば…。モズアスコット。昨年のマイルCS時にはラグビーW杯で日本代表の原動力となった姫野和樹のようなタックルされても倒れない強固な肉体だと指摘しました。たくましい骨格に重厚な筋肉が付いている。野太い首、岩のように隆起した胸前、広い肩幅、発達した臀部(でんぶ)、分厚い腹袋…。一昨年の安田記念を制した芝のG1ホースとはいえ、そのいかつい体つきはターフのライバルたちとは一線を画していた。切れよりもパワーが勝るダート体形です。

 ダート初挑戦となった根岸Sの勝利はフロックでも恵まれたわけでもない。道中は勝手の違う舞台に戸惑っていましたが、直線に向くと水を得た魚、いや、モズだから上空で「キィーキィー」と高鳴きするように喜々として乾燥した砂を蹴り上げた。右大臣の弓から放たれたモズの矢羽根のごとく伸びてきました。血統を振り返ると、欧州の力のいる芝に強いフランケル産駒。母の父は米国の軽いダートで活躍馬を出すヘネシー。父のパワーと母の父のダート適性が絶妙にマッチしたのでしょう。

 ダート体形を包む栗毛は冬場と思えないほど輝いています。右大臣の明るい緋(ひ)色の衣装のように。立ち姿も申し分ありません。警護役の右大臣が賊を警戒するように耳を反り気味にして、鼻をとがらせていますが、ハミの取り方に遊びがあるので問題ありません。

 ダートキャリアを積むことで今後はさらに砂にフィットした馬体と走りに進化していく。七段飾りの武骨な右大臣から分厚い鎧(よろい)飾りの五月人形に姿を変えているかもしれません。(NHK解説者)

 ▽七段飾り 古来、七は縁起の良い数字とされ、江戸時代以降、雛人形飾りとして定着している。別名「十五人飾り」。一番上は男雛と女雛の内裏雛(親王飾り)。2段目は内裏様に仕える三人官女。3段目は能楽の囃子方をかたどった謡、笛、小鼓、大鼓、太鼓の五人囃子。4段目は御殿を守る随身の左大臣と右大臣。5段目は内裏様の従者である泣き上戸、笑い上戸、怒り上戸の仕丁3人。6段目はたんす、鏡台などの嫁入り道具。7段目は御所車など。関東と関西では並べ方が異なる。

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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