【ホープフルS】コントレイル100点!名馬になる前にやってきた飛行機雲

[ 2019年12月24日 05:30 ]

非凡な才能を感じるコントレイル
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 ♪真っ赤なお鼻のトナカイさんが飛んでくる。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。今年最後のG1「第36回ホープフルS」(28日、中山)では東京スポーツ杯2歳Sを圧勝したコントレイルに唯一の満点を付けた。リスグラシューの矢作厩舎が送り出す超大物2歳馬。達眼が捉えたのは伝説のトナカイを想起させる精かんな顔立ちと非凡な体つきだ。有力候補のボディーをクリスマスの風物詩になぞらえながら解説する。

 クリスマスの朝、目が覚めた少年の枕元には大きなギフトボックスが置いてありました。「サンタさんが届けてくれたのかな?もう帰っちゃったのかな?」。少年がベッドから飛び起きて窓を開けると、澄み切った空に飛行機雲が真っすぐ伸びています。サンタクロースを乗せたソリの跡でした。ソリを引くのは8頭のトナカイと、トナカイのように立派な角を付けた1頭の馬。英語で飛行機雲(コントレイル)と名付けられた空飛ぶサラブレッドでした。

 現実にはあり得ないクリスマスの馬にまつわるメルヘン。そんな作り話が生まれたのもコントレイルが4月1日、エープリルフール生まれのせいでしょう。でも、馬体はうそをつきません。そのメルヘンチックな姿は本物です。クリスマスソングのモチーフにもなった伝説のトナカイ、ルドルフのように精かんな面構え。目は意志の強さと穏やかさを宿した不思議な光を放っています。ただならぬ風貌は名馬の相か。体つきはもっと驚かせてくれます。

 460キロ前後の馬体重以上に大きく見せる青鹿毛。柔らかい筋肉が全身を包み、しなやかな造形をつくっています。非凡さがひと目で分かる体つき。現状でも素晴らしいが、この飛行機雲は来年以降に伸びしろをたっぷり残している。体がガチッと固まっておらず、全体のつくりにとても余裕があるのです。その余裕は今後の成長を受け入れる余白と言い換えることもできる。キ甲(首と背の間の膨らみ)や首差しがまだ抜けていないように幼さも随所に残っています。来春のクラシックシーズンにはどんな姿に進化しているのか。日進月歩の成長を確信させる馬体。ギフトボックスのフタを開ける少年のようにワクワクさせてくれます。

 立ち姿も幼い。興奮しているわけでもないのに、陰部をのぞかせています。まるで噴水に立つ小便小僧の彫像のように。来年になれば陰部をしっかり収めて、大人の力強い立ち姿を見せてくれるでしょう。

 明日のクリスマスの朝、目が覚めた競馬ファンの枕元にはギフトボックスが置いてあるかもしれません。箱を開けばサンタクロースから空飛ぶサラブレッドの名が記された馬券のプレゼント。この馬体なら絶対当たるなんてホラを吹くエープリルフール生まれの飛行機雲です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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2019年12月24日のニュース