【鈴木康弘氏 G1かく戦え】菜七子、柔らかく繊細“唯一無二”の騎乗生かせ

[ 2019年2月11日 05:30 ]

藤田菜七子
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 女の武器とは何か。涙、あるいは色気と答える人が多数派でしょうか。大辞泉を引くと「男性を上手にコントロールするために用いる女性の特性」と記されています。でも、競馬の社会に通用する女の武器はちょっと違う。男ではなく、馬を上手にコントロールするために用いる特性です。女性特有の柔らかくて繊細な当たり。藤田菜七子の騎乗ぶりを見ていれば分かるはずです。フワッと柔らかく乗って道中負担がかかっていない。だから直線で多少追い方が甘くなっても、騎乗馬は伸びてくる。

 こんなタイプの女性騎手は寡聞にして知りません。女性初の米クラシック制覇を飾ったジュリー・クローンも、JRA所属の先駆けとなった増沢(旧姓・牧原)由貴子も男勝りのストロングタイプ。菜七子は男に伍(ご)してではなく、女性ならではの乗り方をする。誰にもまねできない武器です。

 コパノキッキングにマイルは1F長いと言われています。体形からも1F長いのは間違いない。でも、あの柔らかい当たりで道中リラックスさせてスタミナを温存し、ラスト1Fに脚を使えるような乗り方ができれば…。

 馬場入り時に少しうるさい馬だと聞いています。人馬とも初めて経験するG1の熱気あふれるパドックで騎乗合図がかかった時からコミュニケーションを取り続けること。「私も緊張してるけど、大丈夫だよ。お互い落ち着いていこうよ」。ルメールやM・デムーロのように耳元に口を近づけ、頭や首筋を撫で回しながら会話しておくことです。レースを楽しもうなんて考えは10年早い。着順を一つでも上げられるよう貪欲に…。競馬の社会に通用する女の武器を生かし切ってほしい。 (NHK解説者)

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2019年2月11日のニュース