97年天皇賞・秋V 女帝エアグルーヴ急死…産後に内蔵出血

[ 2013年4月25日 06:00 ]

96年、武豊を鞍上にオークスを制したエアグルーヴ

 97年天皇賞・秋などを制した名牝エアグルーヴが23日、急死した。ノーザンファーム早来牧場(北海道安平町)でキングカメハメハの牡馬を出産した後の午後11時、内臓出血で息を引き取った。20歳。牡馬と互角以上に渡り合った希代の名牝の死に、関係者は深い悲しみに包まれた。

 牡馬と激闘を繰り広げ「女帝」と呼ばれたエアグルーヴ。その最期も壮絶だった。午後8時にキングカメハメハの牡馬を出産。3年ぶりの産駒誕生に牧場関係者は喜びと安どに浸ったが、それから3時間後に事態は急変した。エアグルーヴは出産による内臓出血を発症。そのまま息を引き取った。ノーザンファーム・吉田勝己代表は「母子ともに元気な姿を確認して間もなくの訃報に声も出ませんでした」。突然の悲劇に言葉を失った。

 伊藤雄二厩舎(解散)から95年デビュー。96年オークスで母ダイナカールとの母娘制覇を達成すると、4歳以降は果敢に牡馬に挑戦した。ハイライトは97年秋。天皇賞・秋で前年覇者のバブルガムフェローをし烈な追い比べの末に首差退けてV。80年プリテイキャスト以来17年ぶりに牝馬の天皇賞馬となり、続くジャパンCでは英国のピルサドスキーに必死に食らいついて首差2着。牝馬としては26年ぶりに同年の年度代表馬に選ばれた。

 通算19戦9勝、重賞7勝の輝かしい実績を残して現役引退。繁殖牝馬としても次々に活躍馬を送り出した。初子のアドマイヤグルーヴがいきなりG1馬に。12年クイーンエリザベス2世C勝ちのルーラーシップなど重賞勝ち馬が4頭。デビューした9頭で計39勝を挙げている。競走馬としても繁殖牝馬としても超一流。吉田代表は「当牧場で一番の実績を挙げた名馬。まさにノーザンファームの歴史の中心にいた馬でした」と、その功績に最大の敬意を表した。

 命と引き換えに産み落としたキングカメハメハの牡馬が最後の産駒となるが、既にアドマイヤグルーヴがアドマイヤセプター(牝5=12年京阪杯2着)を出しルーラーシップは今年から種牡馬入り。くしくも天皇賞ウイークに世を去った名牝は幾多の名勝負の記憶とともに、その血を脈々と伝えていく。

≪語録で振り返る女帝≫
 ▼ビビッときた(エアグルーヴが生まれた数日後、伊藤雄師がその姿を見て将来を確信)

 ▼私が手掛けてきた牝馬の中でも一番(2歳時のいちょうS優勝後に伊藤雄師がコメント。既にマックスビューティ=87年牝馬2冠=超えを予言)

 ▼強い馬に性別は関係ない(97年天皇賞・秋優勝後に伊藤雄師がポツリ)

 ▼牝馬という感じがしない(同レース優勝後に武豊騎手が発言)

続きを表示

この記事のフォト

2013年4月25日のニュース