(8)スクリーンヒーロー

[ 2008年12月28日 06:00 ]

<有馬記念>坂路を駆け上がるスクリーンヒーロー

 午前4時。気温2度と冷え込んだ美浦にあって、この馬の周囲だけは熱気が立ち上っているようだった。坂路へと現れたスクリーンヒーロー。ゆったり、しかし雄大な脚さばきに国際G1ホースのオーラが漂う。最終追いでもパートナーを務めたヘロン(2歳新馬、中山4R出走)を目の前に置き、ラストは14秒9、14秒7とややペースを上げてフィニッシュ。キビキビとしたフットワーク、カクテル光線に浮かび上がる堂々たる四肢。ウオッカ、ディープスカイを一蹴したジャパンC以上の出来で、今年最大の上がり馬は大一番へと挑む。

 「いつも通りの調教。元気いっぱいのいい感じで出せそうだ」。鹿戸雄師はコーヒーをうまそうにすすった。肩に余計な力は入っていない。師匠といえる存在の藤沢和師の下、グランプリ3連覇(02、03年シンボリクリスエス、04年ゼンノロブロイ)の偉業を目の前で見てきた。決戦目前にどんな心構えをすればいいか、誰よりもよく知っている。「レースのことはすべて騎手(デムーロ)に任せる。僕らは応援するだけですよ」。人事を尽くしきった以上、もう競馬の神様にゆだねるしかない。
 馬が急激に強くなった要因は精神面にある。「レース後の回復が本当に早くなった」と指揮官は語る。4歳秋を迎え、気持ちにメリハリが出た。調教は頑張る。馬房では休む。オンとオフをはっきりつけるようになって、調教への集中力が増した。自然とメニューは豊富になり、地力がついた。
 来年は海外遠征のプランもある。「馬の状態と相談しなければいけないがメルボルンCなんかどうだろう。ある程度距離があれば持ち味が生きるはず。夢は広がるよ」と鹿戸雄師はJC後に語ったが、まずは目の前のグランプリに全力投球だ。「JC馬として恥ずかしくない仕上がり。ここで真のヒーローになってほしい」。ゴッホ、スカーレットを倒して日本一の座につく瞬間を指揮官は待ちわびている。

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2008年12月28日のニュース