希有なキャラクターだった「ひふみん」 真面目に一生懸命が性分もやればやるほどコミカルに

[ 2026年1月23日 05:14 ]

加藤一二三さん死去 86歳

中原名人の席の側に立って盤面を見つめる加藤一二三さん(毎日新聞社提供)
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 「ひふみん」の愛称で将棋ファンだけでなく幅広い人気を誇った加藤一二三さん。そのエピソードは枚挙にいとまがない。対局の際に相手の座っている側に立って盤上を見つめる「ひふみんアイ」。食事は昼も夜も「うな重」を食べ、対局中は記録係に何度も何度も「あと何分?」と尋ねて記録係や対局者の顔をしかめさせた。

 なぜ、このような行為をしてしまうのか。加藤さんは、簡潔に語っていた。「自分の主張を通そうとするのは、絶対に勝つ!という強い気持ちの表れなんです」

 まさに、それを体現したのが1982年の名人戦だった。相手は9連覇中の中原誠名人。3勝3敗1持将棋で千日手が2回あった史上まれに見る10番勝負。加藤さんは「ひふみんアイ」を駆使し、記録係に嫌がられながらも必死に中原名人に食らいついた。そして、最終盤に詰みを発見。「あ、そうか!ひゃー!」。対局ではあり得ない奇声が思わず口から飛び出た。加藤さんの直後の指し手に、めったに落胆のしぐさを見せない中原名人が腰から崩れたという。加藤さんは当時を振り返り「自分では“あ、そうか”という一瞬の喜びでした。ひゃーとか、うひょーとか叫んだと言われていますけどね」と苦笑いした。

 引退間際に加藤さんの数々の逸話を「面白い」と感じたフジテレビ「アウト×デラックス」が出演を依頼。加藤さんがクラシック音楽の大ファンのため、指揮やオペラ歌手に挑戦した。これが視聴者から「神回」と呼ばれた。真面目に一生懸命やるのが性分。しかし、やればやるほどコミカルになる。希有(けう)なキャラクターが見事にハマり、絶賛を浴びた。

 テレビに出るようになってから、街を歩くと若い世代からも握手を求められた。「知らない人から声をかけられると、うれしいですね」と笑みが広がった。中学生の時にプロとなり、通算対局数が史上最多というレジェンド棋士。生涯を通じてリスペクトされ、そして誰からも愛された。

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