石川さゆり 圧倒的熱量で観客加熱 コンサートで14年ぶり「啖呵売」

[ 2025年11月4日 12:00 ]

歌への圧倒的な熱量を持つ石川さゆり(提供写真)
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 【牧 元一の孤人焦点】圧巻だった。10月31日、東京・住吉のティアラこうとうで行われたコンサートの7曲目。バナナのたたき売りを主題にした「さゆりの啖呵売」。その楽曲は単なる歌ではなく芝居でもなく石川さゆりの唯一無二の世界として聴覚と視覚を強く刺激した。

 まずは♪さぁさラッシャイ ラッシャイ…で始まる歌がある。その歌はにぎやかで壮快だ。歌と歌の間に啖呵売(巧みな話術で客を楽しませ品物を売りさばく商売手法)がある。その口上は「バナちゃん節」と称されるもので鮮烈だ。台湾で実ったバナナが日本の門司港に運ばれ育てられ売られる過程を面白おかしく威勢のよい節回しで語り込む。言葉数が多い。歌の振り付けとは違う、切れのある身ぶり手ぶりもある。誰にでもできる芸ではない。6分に及ぶ長い作品を演じ切った石川は「暑い」とつぶやいた。

 「さゆりの啖呵売」を初めて世に出したのは2009年。同年5月の福岡・博多座公演のステージで、地域に合わせた楽曲を披露したいという思いから、「天城越え」などで知られる作詞家・吉岡治さんに作詞、当時のコンサートマスター・崎久保吉啓さんに作曲を依頼。啖呵売の口上は、門司港で活躍していた香具師・北園忠治さんの指導を受けた。

 最後に披露したのは2011年6月のテレビ番組出演時だったが、今年が昭和100年に当たることから、昭和の風景を思い起こさせる楽曲としてコンサートの演目に加えた。

 コンサートは「酔って候」でスタート。昨年1月の能登半島地震の被害に遭った石川県能登町の人々への思いを込めて年末のNHK紅白歌合戦で歌った「能登半島」、椎名林檎作詞・作曲の「暗夜の心中立て」などを歌唱。7曲目の「さゆりの啖呵売」の後、思いが深い能登の「あばれ祭り」のかけ声を取り入れた新曲「弥栄ヤッサイ」で会場を盛り上げた。

 休憩を挟んで後半は「津軽海峡・冬景色」で幕を開け、「波止場しぐれ」「夫婦善哉」などを披露。15曲目の「棉の花」は「弥栄ヤッサイ」とのカップリングとなった新曲で、♪今年十五の妹が エンピツ書きの便りをくれた…と歌い、その後のトークコーナーで石川は「学校の歴史では習わない庶民の暮らしを歌にして、みなさんに伝えたかった」と、この曲を歌う思いを明かした。

 終盤は「獨り酒」「恋しゅうて」で会場の手拍子、かけ声と一体となって熱唱。最後は「天城越え」で締めくくり、アンコールで、人間の生き死にと希望を感じさせる名曲「朝花」を歌い上げ、約2時間計20曲のコンサートの幕を閉じた。

 終演後、楽屋に石川を訪ね、話を聞いた。

 ──14年ぶりの「さゆりの啖呵売」に圧倒的な熱量を感じました。
 石川 結構暑くなりました(笑)。役者さんが「この役を演じるのは十数年ぶり」とおっしゃることがありますが、「啖呵売」は今の時代の空気の中で何が必要かということを考えて選びました。今年は昭和100年に当たり、私もアコースティックのコンサートでは昭和の名曲に焦点を当てたりもしていますが、今回のようなフルメンバーのコンサートでは昭和の暮らしを音楽とエンターテインメントでみなさんにお届けしようと思いました。

 ──その圧倒的な熱量に反応して客席の多くのファンが例年以上に熱くなっているように感じられました。
 石川 うれしいです。ステージにいると、みなさんの反応をよく感じ取ることができます。手応えがあると、次のステージではこれをやってみようか、あれをやってみようかと考えます。今年はまだ2カ月ありますが、来年の1月からはこうしよう、ああしようと思います(笑)。みなさんの反応から次のヒントを頂いています。

 ──今年は昭和100年に当たりますが、石川さんは100年の半分以上の53年にわたって歌手活動を続けています。
 石川 私は歌い手を一生仕事と言い切ったことはないんです。自分の感性の赴くままに表現できるあいだ、歌えるあいだはみなさんに歌を届けられたらいいと思いながら続けて来たら53年たってしまいました(笑)。ステージでもお話ししたように、以前は作詞、作曲の先生方が新曲を用意してくれていましたが、ある時から、何を発信するか自分で考えなければいけなくなりました。自分の役目は何だろう?そんなことも考えるようになりました。恋の歌も歌うけれど、みなさんの元気の源になるような歌も歌っていきたい。自分が歌い手として生かされているのであれば何か届けるべき歌があるはず。そんな歌をこれからも発信していきたいと思っています。

 歌への熱量は今後さらに増しそうだ。

 昼公演を終えた石川は全く疲れを感じさせず夜公演のステージへと向かった。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。

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