小田和正 全国アリーナツアー終幕 ♪またあう日まで…
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【牧 元一の孤人焦点】歌に合わせて口ずさんだ。私は普段そんなことはしない。コンサートは演奏をじっくり聴くものだ。そういう考えでいるはずなのになぜかメロディーと歌詞がこぼれ出てきた。
2025年9月30日の横浜アリーナ。小田和正の全国アリーナツアー最終日の前日。3曲目「夏の日」。この曲を初めて聴いたのは今から41年前の1984年。当時購入したオフコースのアルバム「The Best Year of My Life」に収録されていた。
♪君が僕の名前を はじめて呼んだ夏の日…。愛する相手への思いを率直に歌ったラブソングだ。明るい曲調で、聴くと心が弾む。悲しみを誘う歌ではない。ところが、口ずさんでいるうちに涙がこぼれそうになった。当時大学生だった自分の周囲の風景を思い出したこともある。それより何より小田和正というアーティストへの感謝の思いが湧き上がってきたからだ。
その楽曲を真剣に聴くようになってからおよそ50年。小田は78歳。よくぞここまで長きにわたって楽しませてくれた、よくぞまたツアーに出てくれた。ありがとう、という単純な言葉ではその思いを言い表しきれない。何かしたい。それが口ずさむことだったのだろう。
ライブは大ヒット曲「ラブ・ストーリーは突然に」で幕を開け、恒例の映像企画「ご当地紀行」を挟んで約2時間計19曲。活動の集大成的な色合いより、2025年現在ファンに向けて語りかけたい曲集的な色合いが強い印象を受けた。
13曲目「すべて去りがたき日々」。昨年リリースされた新曲で、♪かけがえのない日々 すべては君たちがそこにいたから…と歌う。多くの観客で埋まった会場で聴くと、小田の思いが感じられ胸に深く刺さった。14曲目「君住む街へ」の♪君住む 街まで 飛んで ゆくよ…やアンコール4曲目「今日も どこかで」の♪今日も どこかで 君のこと 想ってる…なども、われわれ一人一人に歌いかけているようで温かい余韻を残した。小田の楽曲はファンのことを思って作られたようなものが多いと改めて感じた。そして、その高音は今もなお美しく透き通っていた。
個人的に最も楽しさを感じたのは10曲目「Yes-No」だ。1982年、オフコースの日本武道館公演で初めて生で聴いて以来、ライブで何十回この曲を耳にしてきたことだろう。イントロが始まると、アリーナが大きな手拍子に包まれ、♪今なんて 言ったの…と多くの人たちが一緒に歌い始めた。もちろん私も口ずさんだ。サビの部分では主旋律ではなくハーモニーのメロディーを追うことで小田とハモった気分になった。終盤のサビのところで小田が1本のマイクでバンドのメンバーと歌う姿に心を揺さぶられた。オフコース時代、この曲でそのようにしてメンバーとハモっていたからだ。
観客に向けての話は限られていた。この日は、アリーナ公演恒例の花道ステージの起源に関するものだけ。2000年12月31日に横浜八景島シーパラダイスで行ったカウントダウンライブで初めて花道ステージを設置したところ、観客が大喜びし、その姿を見て自分もうれしくなって常設するようになったという。
今回のツアーでは7月9日のさいたまスーパーアリーナ公演も見たが、その時は両親にまつわるエピソードを語っていた。オフコースがまだ売れていなかった頃のある日、自分がいないところで父親が母親に「(小田は)いつまで音楽を続けるんだ?」と尋ねたという話を母親から聞かされ「寂しい気持ちになった」という。その後、オフコースはブレーク。小田は2025年のスーパーアリーナで満員の観客に対し、当時の父親の疑問に対する答えとして「78歳になっても続けている」と話し、会場を沸かせた。
多くを語ることはなかった。次のツアーがいつになるか分からない。もう80歳が近いのだ。だが、ライブが終わっても不思議に寂しさは感じなかった。
小田はアンコールの終わりにバンドのメンバーとアカペラで「いつも いつも」を披露した。♪あなたのことは 忘れないよ…と歌い、♪またあう日まで…と続けた。この曲に全てが表れているのではないか。小田はこれからもファンのことを思い続けるに違いない。最終日の10月1日の最後には2018年のツアーの時と同じように「また会おうぜ」と叫んだという。私は早くも、その機会が訪れることに期待している。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。
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