阿部寛、芦田愛菜の魅力さく裂 映画「俺ではない炎上」山田篤宏監督の仕事
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【牧 元一の孤人焦点】公開中の映画「俺ではない炎上」には胸に残るシーンが三つある。一つは阿部寛(61)演じる主人公・山縣泰介が逃亡中、高い崖から降りる場面だ。
崖の上から地上を見下ろした泰介は飛び降りるのは無理と判断し、身につけていた服やズボンを脱ぎ、結び合わせ、近くの大木に縛り付ける。そして、パンツ一丁に運動靴という姿で下降を始めるが、途中で「何やってんだ俺は」と自嘲の言葉を漏らし、苦闘もむなしく最後は力尽きてあおむけで落下する。
この一連の動きが見事だ。スリルの中にユーモアとペーソスがある。誰でもできる芝居ではない。一歩間違えれば陳腐に映る。たぐいまれな表現力が必要で、阿部寛だからこそ成立させられたシーンと言える。
インタビューに応じた山田篤宏監督(45)はこう明かした。
「崖のシーンは大規模な現場でしたが、その中で阿部さんは緊張している気配がありませんでした。これまで過酷な撮影をいくつも耐え抜いて来た経験があるからでしょう。こちらの要望にも柔軟に応じてくださいました。あのシーンは、こちらが笑わせに行ったわけではなく、阿部さん自身が面白いから、見ると自然に笑ってしまうのだと思います」
胸に残る2つ目は、芦田愛菜(21)演じる「謎の大学生」サクラが、ある人物に「あんたが諸悪の根源だからだろうが」と厳しく言い放つシーンだ。最近のテレビのバラエティー番組などで見せる温和な表情とは一線を画し、映画館のスクリーンを揺るがすかのような、鬼気迫る表情を見せる。
山田監督は「撮影前、あのシーンがどうなるのか予想できませんでした。芦田さんとは事前に相談せず、現場で1回やってもらったら、実際に映画で使ったのと同じレベルの芝居を見せてくれました。言葉を失うくらい素晴らしかった。それで本番も1発OKでした。僕は慎重派なので、1発OKするのはためらう方なのですが、あのシーンは、これ以上のものはないと感じました」と振り返った。
胸に残る3つ目は、ラストへと向かうシーンだ。物語の結末に関わるため詳しくは書けないが、登場人物たちの会話が、この物語の納得感を強める。演じる役者と演出する監督の力量がそこによく表れている。
「この映画はエンターテインメントとして、社会問題を糾弾するのではなく、心情の変化や家族との関係、世代間の不和の解消など普遍的なところに行けば良いと思いました」と山田監督は作品づくりの趣旨を説明した。
作品の原作は小説「教室が、ひとりになるまで」「六人の嘘つきな大学生」などを書いた浅倉秋成氏(35)の「俺ではない炎上」(双葉文庫)。物語は大手ハウスメーカーの営業部長がある日突然、彼のものとみられるSNSアカウントから女子大生の遺体画像が拡散され、殺人犯に仕立て上げられるサスペンス・ミステリー。脚本は映画「永遠の0」「空飛ぶタイヤ」などの脚本を書いた林民夫氏(59)だ。
山田監督はニューヨーク大学で映画製作を学び、2017年、第1回木下グループ新人監督賞で自身の企画がグランプリを受賞。その受賞作を自ら映画化した「AWAKE」(20年)で商業映画監督デビューを果たし、「スカジャン・カンフー」(25年)を手がけた。現在は多部未華子(36)が主演するWOWOW連続ドラマ「シャドウワーク」を演出中だ。
「俺ではない炎上」の監督依頼を受けた時の思いをこう語った。
「本当に?と思いました。こんなに大きな映画の話が僕に来るとは思わなかった。脚本の林さんのプロットができた段階でしたが、原作と同じようにユーモアを感じ、作るならば軽快なエンタメの方向を目指そうと考えました」
その後、主人公を阿部が演じることが決まった。
「怖かったです。でも、初めてお会いした時、真面目な印象で、大御所ぶるところが全くありませんでした。こちらの意見をよく聞いてくれて、よくディスカッションしました。阿部さんは撮影前、犯人に仕立て上げられた泰介の逃げる理由がふに落ちていなかった様子で、泰介が自宅で死体を見つけるシーンの撮影で自分の体に血がつくことにこだわっていました。血を見てこそ泰介が逃げたくなるという考えです。僕はそこまで考えていなかったのですが、実際にそのように撮ってみると、確かに阿部さんの言う通りで、勉強になりました。映画と現実の理屈のバランスを阿部さんと一緒に考えるのが楽しかったです」
幼少期から芸能活動を始めドラマ「Mother」(2010年)「マルモのおきて」(11年)などで注目された芦田との仕事も初めてだった。
「皇室の方々や親戚の人たちでもないのに子供の頃から見ている人と話すのが不思議な感じでした。芦田さんのお芝居は、技術もそうですが、センスも凄くて『天才だ、大谷翔平だ!』と思いました」
この作品は2時間5分で、最初から最後までよどみなく一気に突き抜ける感じ。良い意味で奇をてらったところがなく、物語の面白さと役者たちの芝居の良さを十分に感じることができる。
「このような大きな作品では難しいと思っていましたが、オープニングやラストで自分の色を出すこともできました」
巧みに作品を仕上げた山田監督の今後への期待も膨らむ1作だ。
◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。
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