「あんぱん」土佐弁に反響 方言指導の裏側「先生ぽくなく」エキストラにも!音声ファイル演者別3000件

[ 2025年6月27日 08:15 ]

連続テレビ小説「あんぱん」。柳井寛役の竹野内豊と土佐ことば指導の西村雄正(右)(C)NHK
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 女優の今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「あんぱん」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は27日、第65回が放送され、折り返し地点を迎えた。高知を舞台にした物語で、劇中の土佐弁がSNS上などで話題を呼んでいる。主人公・のぶをはじめ登場人物が発し、感動や驚きを意味する感嘆詞「たまるかー!」や、語りを務める同局・林田理沙アナウンサー(35)が週や回を締めくくる台詞「ほいたらね!」などがそれ。「土佐ことば指導」を務める俳優の西村雄正(47)に舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズなどのヒット作を放ち続ける中園ミホ氏がオリジナル脚本を手掛ける朝ドラ通算112作目。国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかし氏と妻・暢さんをモデルに、激動の時代を生き抜いた夫婦を描く。

 西村は高知県土佐市出身で、2002年に俳優デビュー。高知を舞台にした映画「県庁おもてなし課」(13年)「あらうんど四万十~カールニカーラン~」(15年、主演)をはじめ、日本テレビ「デスノート」やNHK大河「花燃ゆ」などのドラマや舞台で活躍。16年から現在まで高知県観光特使も務める。

 「県庁おもてなし課」で方言指導に本格初挑戦。同じ高知が舞台となった23年度前期「らんまん」でも土佐ことば指導を担当したとあり「もう二度とないと思っていたので、今回『あんぱん』からオファーを頂いてビックリしました。『らんまん』で完全燃焼した感じもあったんですけど、『僕がやらなきゃ誰がやるんですか』ということで(笑)お引き受けしました」と振り返った。

 方言指導は台本チェックから始まり、キャストのための練習テープ(音声ファイル)作成やレッスン、収録時の立ち会いなど多岐にわたり、多忙。チームに不可欠な縁の下の力持ちだ。

 「らんまん」「あんぱん」で特にこだわったのは、語尾の「~ぜよ」に頼らない土佐弁だった。

 「まず最初に、地元で普段使われているナチュラルな土佐弁を全国の視聴者の皆さんに提供したい、と思いました。土佐弁といえば『ぜよ』というフレーズが有名ですが、この大きなブランドに頻繁に頼ってしまうと、その作品の土佐弁のナチュラルさが薄れますし、『ぜよ』の音やインパクトが大きすぎて、そのシーンの肝が伝わりにくくなることもあります。そう考えて『ぜよ』は“ここぞ”という時にしか使わないようにしました。地元でも頻繁に使う人は少なく、僕も色々と調べまして、坂本龍馬も生活上は使っていたと思いますが、実は書いた手紙や書簡には『ぜよ』は一つもありません。“ノーぜよ”(笑)なんです」

 「らんまん」は坂本龍馬(ディーン・フジオカ)が口にした第3回以降、終盤まで未使用。「あんぱん」は第2回(4月1日)、朝田釜次(吉田鋼太郎)が屋村草吉(阿部サダヲ)に対して「舐めたらいかんぜよ~」と発した程度。

 「江戸の人でも明治の人でもなく、現代の地元の人が違和感を抱かない土佐弁にすることが僕の仕事で、そのことが作品力アップにつながると考えています。それは『らんまん』も『あんぱん』も一緒です」とドラマの屋台骨を支えている。

 台本チェックは単に台詞を土佐弁に変換するだけではなく、全国の視聴者が理解しやすい言葉、演者が口にしやすい音になるよう修正していく作業。初回(3月31日)、のぶが嵩に言い放った“捨て台詞”「しゃんしゃん東京にいね(さっさと東京に帰れ)」も西村の提案。第33回(5月14日)のケンカ別れの際にもリフレインされた。

 「メーンの登場人物が『らんまん』は上流階級でしたが、『あんぱん』は庶民なので、土佐弁のバリエーションを増やすことができました。『しゃんしゃん東京にいね』は、僕が子どもの頃、東京から引っ越してきた人は土佐弁が分からず、キョトンとしていたのを覚えていて、“のぶが怒っているみたいだけど、何と言っているかは分からない”という嵩の表情やリアクションにつながると思って提案しました」。これも見事に奏功した。

 方言テープ(音声ファイル)の種類も「らんまん」から進化。結太郎役の加瀬から“ゆっくりしゃべる”バージョンも欲しいと依頼され「作業量は多くなりますけど、確かに演者さんにとっては、その方が助かりますよね。スロー版は今回、初めて作りました。子役の方には低い声よりも子どもらしい高い声で吹き込んだり、キャストの皆さんそれぞれの台詞回しを真似してみたり。演者さんの個性に合わせた音声ファイルを作った方が覚えやすくなって、その上でレッスンに移行しました」。指導はエキストラにまで行ったほど。「あんぱん」は「らんまん」よりも登場人物が多く、音声ファイルを作成したのは約50人。個々に複数のファイルがあり、最も多いのはのぶ(今田美桜)の約750件。現在、総ファイル数は3000近くと膨大な数に上る。

 今田の習得ぶりについては「今は、もう地元の人と全く変わらないイントネーション。100点満点」と絶賛。「今田さんも最初は苦労していましたけど、そこで嫌になったりせず、のぶのように明るく元気に取り組む姿勢が本当に素晴らしかったと思います」。自身も「指導者ぽくしないこと」を心掛け。「最初は先生と呼ばれますけど、僕の場合はニックネーム(ニッシー)で接してもらったり。先生と生徒の関係だと、どうしても硬くさせたり、萎縮させてしまうことがあるので、友達のような感覚で。近所のおじさんから教わるみたいに(笑)、肩の力を抜いて向き合ってほしいと思っています」。週によって替わる演出陣よりも長く撮影現場におり、ムードメーカー的な役割も担う。蘭子役の河合が「ずっと側で見てくれているから安心」と語るなど、出演者からの信頼は絶大だ。

 方言指導に携わったのは、土佐藩士役を演じた11年のNHK「新選組血風録」で「3シーンほど頼まれたのが最初。そこから始まって、朝ドラで2回も担当させていただけるなんて、ラッキーですよね。NHKさんとのご縁、運命的なものを感じずにはいられません。『あんぱん』を僕の土佐ことば指導の集大成にしたいと思います」。ドラマ後半戦も、アクセル全開で突っ走る。

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