「鎌倉殿の13人」大河の“架空キャラ”が担う役割 ネット戦慄の善児“予測不能”体現 冴え渡る三谷脚本

[ 2022年3月27日 05:00 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第11話。梶原景時からの“スカウト”に応じる善児(梶原善)(C)NHK
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 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)で俳優の梶原善(56)が“怪演”している不気味な仕事人・善児(ぜんじ)が、視聴者を恐怖のどん底に陥れている。ほぼ台詞がなく、淡々と人を殺めるドラマオリジナルの登場人物。大河ドラマの架空キャラクターは賛否を呼ぶこともあるが、2016年「真田丸」に続き、今回も脚本・三谷幸喜氏(60)が冴え渡る造形。大河ドラマをドラマたらしめる重要な役割を果たしている。

 <※以下、ネタバレ有>

 俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は04年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 梶原演じる善児は、源頼朝(大泉洋)の命を狙う伊豆の実力者・伊東祐親(浅野和之)に仕える下人。頼朝と祐親の愛娘・八重(新垣結衣)の息子・千鶴丸(太田恵晴)、恰幅の良い伊豆在郷武士・工藤茂光(米本学仁)、義時の兄・北条宗時(片岡愛之助)、八重の夫・江間次郎(芹澤興人)、主人・祐親、八重の兄・伊東祐清(竹財輝之助)と次々に命を奪ってきた。

 前回第11話(3月20日)は「許されざる嘘」。1181年(治承5年)冬、北条政子(小池栄子)が2度目の懐妊。阿野全成(新納慎也)によると、親が徳を積めば望みの男児が生まれるとあり、祐親・祐清父子の恩赦が決まったものの、一転、全成は「生まれてくるお子のためには、まず千鶴丸様が成仏しなければなりません。その功徳によって、再び男として生を受けるのです。お命を奪ったのは、伊東祐親殿と聞いております。伊東殿が生きておられる限り、千鶴丸様の成仏は難しいかと」と進言。頼朝は元妻・八重の父と兄といえども、冷徹な命令を下した。

 番組公式ツイッターによると、史書「吾妻鏡」には「政子が懐妊し、源頼朝の嫡男誕生の期待が膨らむ中、三浦義澄に預けられていた伊東祐親が自害しました。御所にいた義澄は走って館に戻りましたが、その時には既に死体は片付けられていたそうです」。これが今作においては、千鶴丸殺害を善児に命じた祐親が、その善児に討たれるという皮肉の極みとなった。

 仲介役は「石橋山の戦い」に大敗した頼朝を見逃し、そして頼朝の家臣となった梶原景時(中村獅童)。さらには、立ち去る善児を呼び止め「わしに仕えよ」と配下に引き入れた。

 SNS上には「因縁の続きが悲劇を呼ぶ。恐ろしい脚本」「梶原景時と善児のタッグ、怖すぎる」「想像以上に『許されざる嘘』の内容が…たぶん、今までで一番エグい回」などの声が続出。大反響となった。

 善児の存在が文字通り、今作のキャッチコピー「予測不能エンターテインメント」を体現。単なる“史実の再現”には決してならない。大事ななポジションを託された。“歴史の余白”を埋めるオリジナルキャラクターも、大河ドラマの醍醐味の一つと言えよう。

 「真田丸」においては、真田家に仕える忍び・佐助(≠猿飛佐助、藤井隆)が肝心要な任務を果たした。主人公・真田信繁(幸村、堺雅人)の生涯のパートナー・きり(長澤まさみ)も様々な伝承があったが、三谷氏が見事な脚色。序盤の“ウザい”評から一転、終盤は感動をもたらした。

 陰謀と災いが渦巻き、源氏兄弟も確執。源平合戦や鎌倉幕府成立後の熾烈な権力闘争を描く“ダーク大河”が本格的に幕を開けた。その一翼を担い、神出鬼没の善児。今後も一瞬たりとも気が抜けない。

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2022年3月27日のニュース