新たなヒーロー・西成ゴロー 上西雄大監督「役者として、演じたいと思った」

[ 2022年2月9日 08:30 ]

映画「西成ゴローの四億円」の上西雄大監督
Photo By スポニチ

 【牧 元一の孤人焦点】そこに新たなヒーロー像がある。見た目はさえないが、戦えば最強。映画「西成ゴローの四億円」(11日から東京・池袋シネマ・ロサなどで順次公開)の主人公・土師晤郎だ。

 上西雄大監督(57)は「強さのもとは娘を思う気持ち。娘を守るため、自分が負けるわけにいかない。死ぬわけにいかない。家族のきずなが彼を支えている」と話す。

 主人公・土師晤郎は大阪の西成に住む日雇い労働者。腕っ節が強く、仲間から頼られる半面、殺人罪で服役していた過去から「人殺しのゴロー」との異名を持つ。実は政府諜報機関の元工作員で、喪失していた記憶を次第に取り戻してゆき、心臓移植が必要な娘のために4億円を稼ぐことを決意する。

 主演も務めた上西監督は「役者として、西成ゴローを演じたいと思った。もともと役者で、自分が書いた脚本なので、自分がいちばんうまく表現できると考えた。監督と主演のどちらかを捨てろと言われたら、迷わず、監督を捨てる。あこがれていた松田優作さんや萩原健一さん、原田芳雄さんへの思いもある」と明かす。

 この映画には1970年代後半に松田優作さんが主演した映画「最も危険な遊戯」「殺人遊戯」「処刑遊戯」(いずれも村川透監督、東映セントラルフィルム配給)を思い起こすような世界観がある。

 上西監督は「あの時代の東映セントラルフィルムの作品をずっと見ていた。ああいうにおいをこの映画に出したかった。ゴローは優作さんに演じてもらった方がもっと格好良くなるだろうが、格好悪いところを背負った男なので、その部分は僕が表現できていると思う」と語る。

 見どころの一つは格闘場面。ゴローは圧倒的な強さで相手を打ち負かしてゆく。

 自らアクションシーンに臨んだ上西監督は「見せるためのアクションではなく、無駄な動きを省いて最短距離のアクションを求めた。僕自身は子供の頃に漫画『あしたのジョー』にあこがれ、20代の頃にボクシングをやっていて、ジョーのように『あしたのために』と練習したりスパーリングしたりしていた」と語る。

 俳優の奥田瑛二が演じるフィクサーがゴローの最大の敵となる。

 「奥田さんは完璧だった。奥田さんとは初めての共演で、撮影前はとても怖かったが、現場では、ゴローとして対峙(たいじ)した。終わった後、モニターで見て、自分で『良くやったなあ…』と思った。あのフィクサーにはリアリティーがあり、立体感があって、西成ゴローの世界観を構築する真ん中にある」

 続編となる映画「西成ゴローの四億円 死闘編」も、今月18日から順次公開される予定だ。

 「シリーズでやりたい。一生やりたいと思っている」

 撮影する監督、演じる役者が心底ほれ込むキャラクターであることが、西成ゴローが最強である源だ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2022年2月9日のニュース