第1局明暗この一手 渡辺、永瀬を煙に巻いたタイムコントロール

[ 2021年1月12日 05:30 ]

スポニチ主催第70期王将戦7番勝負第1局第2日 ( 2021年1月11日    静岡県掛川市・掛川城二の丸茶室 )

A図
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 渡辺勝利の分かれ道はどこにあったのだろうか。スポニチ本紙観戦記者の指導棋士五段・関口武史がそのポイントを解説した。

 渡辺王将の封じ手は▲5五歩と焦点の突き出しだった。手の広い局面で封じた渡辺の戦略性がうかがえる。1日目終了インタビューで「一晩しっかり考える」と述べた渡辺の一手に永瀬が考え込む。△同銀直に63分、続く△6八歩に57分と永瀬の苦吟の時間が続く。

 午後の休憩明けに指された渡辺の▲7四銀(A図)が好手。飛車が逃げると▲7六角が痛烈な一手で後手に受けがない(△6五歩が二歩の禁じ手で打てない)。1日目の▲9七角に続き強烈な角のラインが後手陣に突き刺さる。永瀬の△6七歩を悪手にする組み立ては秀逸で渡辺がはっきりリードを奪った。

 つかまえどころのなかった永瀬王を▲7四銀の一手で射程圏に捉え収束へ向かう。続く▲6六桂もそつのない効かしで、後手からの△6六角を未然に防ぎながら左辺の制空権を安定させ、渡辺は盤石の態勢を築く。さらに棋譜だけでは見えない渡辺のタイムコントロール(常に相手より30分以上リードを保つ)が永瀬を苦しめる。非勢に加えて持ち時間の切迫が、粘りを身上とする永瀬の体力、気力を奪っていく。なおも△7七歩と先手陣に嫌みをつけ、△5三金と粘る永瀬に対し、渡辺は▲5三飛成~4三金と強く踏み込み勝負を決めた。

 自王の不詰めを読み切り必至をかけ渡辺が制勝。事前準備、正確な技術、巧妙な時間管理、渡辺の総合的な戦術がさえわたり好スタートを切った。永瀬は初の2日制で手探りな1局目だったが、2局目以降順応できるかに注目だ。

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