「麒麟がくる」松永久秀が託した平蜘蛛 本能寺への“爆弾”?吉田鋼太郎 光秀は「心の友」(ネタバレ有)

[ 2021年1月10日 20:46 ]

大河ドラマ「麒麟がくる」第40話。松永久秀(吉田鋼太郎)から託された茶器「平蜘蛛」を受け取る明智光秀(長谷川博己)(C)NHK
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 俳優の長谷川博己(43)が主演を務めるNHK大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜後8・00)は10日、第40話「松永久秀の平蜘蛛(ひらぐも)」が放送され、俳優の吉田鋼太郎(61)が熱演してきた戦国大名・松永久秀が壮絶な死を遂げた。視聴者の期待が集まった「爆死」こそなかったものの、天下一の名物と謳われる茶器「平蜘蛛」を松永が主人公・明智光秀に託し、平蜘蛛が最大のクライマックス「本能寺の変」へのキーアイテムとなりそうな怒涛の展開。吉田は、松永にとって光秀は「心の友」だと感謝した。

 <※以下、ネタバレ有>

 大河ドラマ59作目。第29作「太平記」(1991年)を手掛けた名手・池端俊策氏(75)のオリジナル脚本で、智将・明智光秀を大河初の主役に据え、その謎めいた半生を描く。

 吉田が演じてきた松永久秀は、主に畿内を中心に勢力を広めた戦国武将。軍事政治両面において力を発揮し、したたかで荒々しい生き方が若き光秀に大きな影響を与えた。美濃の斎藤道三(本木雅弘)らと並ぶ「戦国三大梟雄(きょうゆう)」の1人。その残忍さ、非道さは後世に伝わる。

 第40話は、大坂本願寺攻めの最前線から突如、松永(吉田)が逃亡を図り、織田方に衝撃を与える。光秀(長谷川)は今、離反する理由を松永に問いただす。松永は筒井順慶(駿河太郎)に大和の守護の座を与える信長(染谷将太)が許し難く、自分に大和を任す本願寺側に付くと明言し…という展開。

 信長に反旗を翻した松永は天正5年(1577年)、大和・信貴山城に籠城。茶人としても知られたが、最期は茶器・平蜘蛛に火薬を詰め、日本初の爆死を遂げたとされる。

 今回は爆死説を採らず、松永は伊呂波太夫(尾野真千子)を介して光秀に平蜘蛛を託した。

 吉田は「松永が『平蜘蛛は自分だ』と言った場面は面白いと感じましたね。平蜘蛛は一見、異様に見えるものの、よくよく見ると理にかなった形をしている、だから美しいと言われています。それが自分だと言うのですから、考えようによっては非常に厚かましいですよね。ですが、松永は生まれがよくないために己の才覚だけでのし上がった人物。その見方で、姿かたちが一見、醜怪な平蜘蛛と重ねるという点では、実感を込めて演じられました」と解釈した。

 松永と光秀の出会いは初回(昨年1月19日)。鉄砲を求める旅に出た光秀が堺を訪れると、ひょんなことから三好長慶(山路和弘)の家臣・松永に気に入られる。松永が光秀を食事に誘うと、鉄砲を買うため大金を持つ光秀は酔いつぶれてしまう。翌朝、金を盗まれたと思った光秀だが、枕元には2~3カ月はかかると言われた鉄砲が置いてあった。

 放送上は、それから1年。この夜、平蜘蛛を託したのが、2人が語らう最後のシーンとなった。

 「思えば、これまで松永の場面は、光秀とのシーンがほとんどなんです。あの場面は、松永と光秀との最後の場面、そして長谷川くんとお芝居する最後の場面でもありました。撮影が始まったのが去年の春でしたから、随分と長い間、長谷川くんとお芝居していたんだなぁと。撮影の際は、いろんな思いが重なって、非常に感慨深いものがありましたね」

 松永は最期に自害したものの「ただ『麒麟がくる』での救いは、松永には自分のすべてをさらけ出せる明智光秀という心の友がいたということ。松永の最期の心情の中には『光秀ありがとう』という思いもどこかに含まれているんだということを、視聴者の方に汲み取っていただけると、うれしいなと思いますね」と2人の関係性を強調。

 「作品の中で、光秀が年齢を重ねていく様を、長谷川くんはすごく上手に演じてらっしゃる。どんどん精悍になっていくし、重みが増していますよね。ところが、2人の最後のシーンでは、堺で初めて出会った頃の光秀がふと蘇ったように感じました。特に光秀の『戦などしたくない、平蜘蛛などいらない!』という台詞の部分では、若い頃の光秀をもう一度見たような気がして。本当に素晴らしい演技だったと思います」と座長を称えた。

 松永の死後、光秀は信長から安土城に呼び出され、平蜘蛛の在り処を問われるが、本当のことを言わず。信長は「十兵衛が初めて、わしにウソをついたぞ」と見抜き、怒り心頭。背後には、羽柴秀吉(佐々木蔵之介)の偵察もあった…。

 坂本城。伊呂波太夫は松永から預かっていた平蜘蛛を光秀に渡し「松永様は仰せられました。『これほどの名物を持つ者は、持つだけの覚悟が要る』と。いかなる折も、誇りを失わぬ者、志高き者、心美しき者。『わしは、その覚悟をどこかに置き忘れてしもうた』と。十兵衛に、それを申し伝えてくれ」――。光秀は松永の思いを受け取り、何を感じたのか。丹波攻めの後、帝(坂東玉三郎)に拝謁したいと伊呂波太夫に告げた。

 インターネット上には「平蜘蛛と爆死しない代わりに、とんでもない爆弾を織田家中に投下して逝ったので、やはり今回は実質、松永久秀の爆死回」「爆死シーンの代わりに光秀の心に爆弾を宿す脚本だったか。これは恐れ入った」「松永久秀の仕掛けた平蜘蛛という矜持の爆弾が炸裂して、十兵衛と信長の関係に修復不可能な亀裂を入れさせていった。凄ぇな」「久秀が平蜘蛛と爆死するんじゃなく、平蜘蛛が爆弾だからタイトルが『松永久秀の平蜘蛛』。平蜘蛛が主役。そして十兵衛のところへ来た。恐ろしい」「信長があれほどまでに欲しがっている平蜘蛛が自分の手の内にある。この危険な優越感を十兵衛の出世欲として描いているのは面白い」などと脚本を絶賛する声が相次いだ。

 【平蜘蛛(ひらぐも)】松永が所有し、天下一の名物と謳われる茶器。殊の外、信長が欲しがった。正式名称は「古天明平蜘蛛(こてんみょうひらぐも)」。低く平らな形状が、蜘蛛がはいつくばっている形に見えることが名前の由来とされる。当時の武将にとって、茶の湯は欠かせない教養の一つ。名物茶器を所有することが権力者かつ文化人というアピールになり、持っていない者は権力者としても文化的とはみなされなかった。特に信長には「天下の名物は天下人の元にあるべきだと」いう考えがあり、降伏する武将が名物茶器を持っていれば、命の代償として献上させていたとも言われる(番組公式サイトから)。

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