避難所暮らし、車中泊経て…野口真未さんミス・ユニバース熊本代表に

[ 2016年12月14日 14:57 ]

熊本城をバックにポーズをとる野口さん
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 熊本地震発生から14日で8カ月を迎える。復興への険しい道のりが続く中、先月25日に開催された「2017ミス・ユニバース・ジャパン熊本大会ファイナル」でグランプリに輝き、ミス・ユニバース熊本代表となったのが野口真未(まみ)さん(20=熊本大法学部2年)だ。文字通り、才色兼備の真未さん。自身も熊本地震で被災し、避難所暮らしや車中泊を経験したことで、復興の旗振り役を担うことを誓った。(東山 貴実)

 本当に怖かった。4月14日の前震。真未さんは熊本市内のビルで塾講師のアルバイトをしていた。経験したことのない揺れ、地鳴り。そして、2日後には熊本市北区の自宅で就寝中に本震に見舞われた。家族全員で真未さんの母校でもある北部中学校の体育館に避難。「余震でまた揺れて、体育館の上から照明が落ちてくるんじゃないかとか…。怖くて、このまま死んでしまうのかと思う時もあった」と振り返る。避難所暮らしを経て、長崎県佐世保市の親戚宅に県外避難した。

 佐世保市で復興支援の募金活動を行い、さらに熊本に帰っても災害支援センターで全国から訪れるボランティアの受付け業務に尽力した。自らおにぎりを握って避難所で暮らす被災者に配ることもあった。そんな経験に加え、5月後半に甚大な被害を受けた益城町を訪れ、変わり果てた町並みを見たことも心境に大きな変化をもたらした。

 「ボランティア活動を通じて、全国の皆さんの応援を肌で感じて、感謝の気持ちを伝えると同時に、少しずつ前を向いて頑張っている熊本の姿を発信したいと思うようになりました」

 強い発信力を得るには…。そこで決意したのが、ミス・ユニバース熊本大会への応募だった。

 「11年間、スパイクを履いて競技場で勝負してきたけど、今度はハイヒールを履いてステージで勝負しよう」

 真未さんは小学4年から陸上競技を始め、6年時に東京・国立競技場で開催された全国大会「日清カップ」で、走り幅跳びで6位に入賞。済々黌高1年時には岐阜国体にも出場。当時から美少女ぶりは際立っており、陸上雑誌にも取り上げられた。そして、現在も三段跳びを専門に続ける現役アスリート。今夏の熊本選手権でも3位(11メートル07)に入った。自己ベストは走り幅跳び5メートル54、三段跳びは11メートル67。来年の目標は愛媛国体(成人の部)への出場だ。

 ミス・ユニバース熊本大会に向けた2カ月間のビューティキャンプでは、スピーチ、ダンス、ウォーキング、メークなどを勉強した。特に大変だったのがヒールを履いてのウォーキング。これまで陸上競技中心の生活で足のケガを防ぐため、ハイヒールなど履いたことがなかった。それが今では14センチのヒールを履けるようになった。

 「文字にはパワーがある」と書道も趣味のひとつで、年始の書き初めで「輝」の文字をしたためることも多い真未さんは、ミス・ユニバース熊本大会の舞台でも「女性としてもっともっと輝きたい」とスピーチ。そして、熊本代表という輝く栄光を手にした。「これからは文武両道で頑張ることにプラス、美も兼ね備えた女性になれるように」と、いつまでも輝ける女性でいるために美の追究を目指す。

 来年7月に待ち受ける日本大会。昨年は同じ熊本大(医学部)の松本紗也加さんが準グランプリに輝いた。「お手本とする先輩に追いつくだけでなく、追い越す勢いで頑張りたい。7月までトレーニング期間は長いけど、陸上で培った精神力は私の強み。日本大会で一番になることで、熊本のみなさんに勇気と元気を届けられたら」と前だけを見据える。そんな真未さんの将来の夢は弁護士。「もっと安心して生活できる熊本の地域づくりのための法律を提案できるような弁護士になりたい」。故郷を愛するからこその言葉だ。

 阿蘇草原をはじめとする熊本の雄大な自然が大好きで、熊本城への愛着も人一倍だ。「毎年春にお花見に行って。今年の春も地震が起こる前に3回行きました」。地震で被災した熊本城は天守閣の瓦が落ち、石垣も各所で大規模に崩落した。通学途中に傷だらけの熊本城を見て、涙ぐむ日々もあった。天守閣の復旧、復興には3年、城全体では20年以上の歳月がかかるといわれる中、「熊本城は熊本のシンボル、それは同時に復興のシンボル。1日も早く元通りになって、また天守閣に登って熊本市街から阿蘇まで一望できる日が来れば…」と願いを込める。ミス・ユニバース熊本代表となった翌日には、熊本市が11月1日から一口1万円以上の寄付で募っている熊本城の「復興城主」にもなった。

 来春には熊本大の交換留学制度で、ニュージーランドに短期留学する。ニュージーランドも今年11月にマグニチュード7・8の大地震が発生した。「英会話の上達も目的ですが、地震を経験した同世代の思いを聞きたい」。熊本から世界へ、そして熊本を世界へ。「真っすぐ未来へ羽ばたくように」。その名前に込められた両親の願い通りに、真未さんは“人生(たび)の空”を力強く飛翔している。

 ◆野口 真未(のぐち・まみ)1996年(平8)8月27日、熊本県熊本市生まれの20歳。済々黌高から熊本大に進学し、現在、法学部2年生。趣味は陸上競技、書道、旅行。好きな食べ物はチーズフォンデュ、塩トマト、ソフトクリーム。好きな言葉は「努力の天才になれ」。尊敬する人は両親。身長1メートル67。血液型O。

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