野坂さんに最後の別れ 「言葉にならない大きな欠落」と五木さん

[ 2015年12月19日 14:55 ]

野坂昭如さんの葬儀・告別式で、弔辞を読む五木寛之さん

 小説「火垂るの墓」などで知られ、9日に85歳で死去した直木賞作家で元参院議員の野坂昭如さんの葬儀・告別式が19日、東京都港区の青山葬儀所で営まれた。会場には、野坂さんが歌ったヒット曲「黒の舟唄」が流された。

 同世代の作家、五木寛之さん(83)は弔辞で「野坂昭如とは私たちの希望のともしびであり、先駆けの旗だった。同じ時代を生きた仲間が次々と逝き、今あなたを見送ることになり、言葉にならない大きな欠落感を覚えずにはいられない」と故人をしのんだ。

 作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(93)の弔辞は、女優の檀ふみが代読。「野坂さんは政治のだらしなさを?責し、原発反対の筆をおかず、このまま進めば日本は滅びると憂い続けた。切実な遺言を若い人に伝えるのがせめての報恩になる」と述べた。

 葬儀委員長を務めた放送タレントの永六輔さん(82)は野坂さんの「二度と飢えた子どもの顔は見たくない」という言葉を紹介し、それを後世に伝えることを涙ながらに誓った。

 喪主の妻暘子さんは最後にあいさつ。野坂さんが脳梗塞で倒れた後の13年近くに及ぶ介護生活を振り返り「野坂が目を閉じた顔は美しく穏やかで、初めて見る表情だった。きっと母親に抱かれた昭如少年だったに違いありません」と話した。野坂さんが最も大切にした言葉として「戦争をしてはならない。巻き込まれてはならない。戦争は何も残さず、悲しみだけが残るんだ」を紹介し「『火垂るの墓』は世界で読まれています。日本の大事な一冊になってほしい」と話した。

 参列者は約600人。出版、芸能関係者のほか、野坂さんのファンも多数訪れ、献花した。

 野坂さんのモノクロの遺影はサングラスをかけ、くつろいだ表情。祭壇はユリやカーネーションなど白い花で飾られた。バイオリニストの佐藤陽子さんも演奏するなど、音楽葬として営まれた。

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2015年12月19日のニュース