スポットライトが当たるのは俳優&女優でも…「映画は監督のもの」

[ 2015年8月26日 11:00 ]

映画「向日葵の丘 1983年・夏」初日舞台あいさついに登壇した(左から)太田隆文監督、藤井武美、田中美里、芳根京子、常磐貴子、百川晴香、藤田朋子

 映画の完成披露試写会や公開初日には、出演者や監督が観客の前に登場して舞台あいさつを行う場合が多い。新聞やテレビも取材に訪れ、その様子を記事にしたり情報番組で放送する。報道陣、特にスポーツ紙が注目するのは主演や旬の俳優・女優で、記事の中で監督を紹介するのは名前だけになってしまうことがほとんど。しかし、埋没させてしまうのがもったいないくらい、監督たちは発言が面白い。

 「TRICK」など人気ドラマも手掛けたヒットメーカーの堤幸彦監督。20日に東京国際フォーラムで行われた最新作「天空の蜂」の完成披露試写会では、江口洋介、本木雅弘ら出演者10人、主題歌を担当した秦基博と登壇。満席の会場を見渡し「これでお客さんが全部なんじゃないかなという気がします」とあいさつして笑いを誘ったのは序の口。本木が「私事ですが、この作品が40代最後の作品」と話すと、「私事ですが50代最後の公開作品。皆様の力でいい還暦にしていただきたいと思っています」と茶目っ気たっぷりに呼び掛け、観客を笑わせた。綾野剛には「汗をかくシーンは普通、霧吹きを使うけど、綾野くんは自分の意思で自在に汗を出せる」といじってたじたじにさせ、ファンを喜ばせた。

 広い舞台上でずらりと並んだ12人の中で立ち位置は一番端だったが、常に半歩前に出てトークに絡む前のめりスタイル。江口がスタントなしでヘリコプターでのシーンを撮影したことを明かすと、「トム・クルーズ!トム・クルーズ!」とはやし立て、また爆笑。出演者との軽妙な掛け合いで、終始会場を盛り上げていた。

 22日に都内で初日舞台あいさつを行った「向日葵の丘 1983年・夏」の太田隆文監督もナイスキャラだった。主演の常盤貴子ら女優6人と登壇し、自らマイクを握って司会。常盤が最近見て感銘を受けた他の作品について熱く語り始めると「宣伝!?」と絶妙のトーンで突っ込みを入れ、役作りで金髪にしたまま登場した藤田朋子には「パンクロックにしか見えない…」とバッサリ。ムードメーカーとなって会場の空気を暖め、女優陣との信頼関係が伝わるやりとりもアットホームな雰囲気を生み出し、観客だけでなく報道陣まで思わず笑ってしまう進行ぶりだった。

 「映画は監督のもの」といわれる。映画関係者は「監督は誰よりも作品に思い入れがあるし、スタッフを代表しているという気持ちも強いので宣伝にも力が入るんです」と解説。一人でも多くの人に見てもらいたいという気持ちから、俳優陣が行かない地方や海外にも足を運ぶ。

 それでも、スポットライトはどうしても出演者に当たってしまう。太田監督はトーク終了後の報道陣向けの写真撮影時、観客に向かって「皆さん、見ててくださいね。明日の新聞では僕だけ(写真が)切られてますから」。監督の自虐ネタに笑わされ、女優陣に合わせていたカメラのズームを引いて監督も写真に収めた。

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2015年8月26日のニュース