【桂文枝の弔辞全文】師匠のご遺志を受け継いでいく所存

[ 2015年3月26日 05:30 ]

米朝さんの合同葬で弔辞を読む桂文枝

桂米朝さん合同葬

(3月25日 阪府吹田市・公益社千里会館)
 師匠、本当にありがとうございました。そして、お疲れさまでございました。生前の温かい、ご指導に対し、あらためて御礼申し上げます。

 師匠の師匠、四代目米団治師匠は随筆の中で、「落語は芸術であらねばならぬ」と、おっしゃっておられます。米朝師匠はまさしく、その言葉通り、実践されました。人間国宝になられ、また、落語家として初めて文化勲章を受章されました。それが、何よりの証拠だと思います。この偉業はわれわれ、上方落語家の誇りでございます。

 師匠は知識が豊富だということは万人の知るところではございますが、知性が際立っているだけではなく、心優しく、涙もろいところがおありでございました。知と情と併せ持っておられるからこそ、師匠の落語は、すべて魅力的だったのだと思います。

 今、繁昌亭の舞台に掛けられている師匠に書いていただいた「楽」の字。私は当初、「薬」という字を書いていただきたくて、9年前に、武庫之荘のご自宅に参りました。「笑いは薬」という意味で、昔の落語の席には「薬」という字が掛かっていたからです。師匠は私の申し入れに快く応じていただきました。お書きになった字は草かんむりがありませんでした。薬ではなく、楽しいという字だったのです。

 師匠はおっしゃいました。「草かんむりには、本物ではないという意味がある。落語家はお客様に心から楽しんでいただいてこそ、本物の落語家なんや」。師匠が戦後、風前の灯火(ともしび)だった落語を残して下さいました。その血のにじむような努力を無駄にしないように、私たちは、師匠の書かれた「楽」の字のもと、努力して参ります。師匠のご遺志を、これから先もずっと受け継いでいく所存でございます。どうか、お守り下さい。これまでお世話になったことを感謝申し上げ、慎んで哀悼の意を表します。

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