健さん日中の懸け橋に…中国で異例追悼 党系新聞が影響振り返る

[ 2014年11月23日 06:33 ]

高倉健さんの死去を報じる光明日報などの中国各紙

 10日に83年の生涯を閉じた俳優高倉健さんをめぐり、中国が異例の対応を取っている。習近平指導部が対日強硬姿勢を続ける中、外務省が哀悼の意を示し、共産党系の新聞は追悼記事を掲載。中国の人々と真摯(しんし)に向き合った健さんの生き方が見直され、冷え込んだ日中関係の改善に向け「心の交流」の大切さを訴える声も上がっている。

 共同電によると、党宣伝部が管轄する全国紙、光明日報は「彼はある時代の中国人の記憶そのものだった」と中国の民衆や社会に与えた影響を振り返る記事を掲載。近年、党系メディアが日本の俳優の死去を大きく取り上げるのは極めて珍しいが、中国紙記者は「(健さんの)存在が大きすぎて黙殺できない」と理由を明かした。

 「文化大革命」(1966~76年)後に中国で初めて公開された日本映画が健さん主演の「君よ憤怒の河を渉れ」だった。寡黙だが信念を貫く主人公の姿は、政治に翻弄(ほんろう)された中国の民衆を癒やし、残虐非道な戦時中の日本人のイメージを一転させた。中国版ツイッターには「時代を代表する役者だった」「安らかに眠ってほしい」などの書き込みが相次いでいる。

 健さんは中国のファンや親交があった業界人とも誠実に接した。中国メディアによると、健さん役の声優が01年に亡くなると弔電を打ち、線香を送った。映画監督のチャン・イーモウ氏が08年の北京五輪の開会式を演出した際には日本の寺で成功を祈り続けたという。

 健さんが死去した10日、くしくも北京の人民大会堂では安倍晋三首相と習氏が握手を交わし、2年半ぶりの日中首脳会談が実現した。中国伝媒大の楊洪濤准教授は光明日報で「高倉健への追想を、芸術作品をしのぶだけにとどめてはならない」と訴えた。今後、健さんが日中の“懸け橋”となる可能性もある。

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2014年11月23日のニュース