団十郎さん辞世の句「色は空 空は色との 時なき世へ」

[ 2013年2月28日 06:00 ]

団十郎さんの祭壇

市川団十郎さん本葬

(2月27日 東京都・青山葬儀所)
 歌舞伎関係者に加え、1500人以上の一般ファンも参列した本葬で、団十郎さんの“辞世の句”が披露された。団十郎さんがパソコンに「色は空 空は色との 時なき世へ」と残した句を、はがきサイズの会葬御礼に印刷して弔問客全員に配布。海老蔵が喪主あいさつでも紹介した。

 本葬に向けて準備していた海老蔵が19日に団十郎さんのパソコンの中に残されているのを見つけた。昨年12月ごろにつくられ、当時、団十郎さんは体調を崩して舞台を降板していた。今年4月に再開場する新しい歌舞伎座での復帰に向けて治療を続けていた時期だった。

 海老蔵も会見で「父が自分の最期を悟っていたのを気づかずに大変申し訳なく、情けない思いがしました」と声を震わせた。内容については「自分の最期の覚悟があったから書いたものかもしれない」とみており、「父は、空や宇宙が好きだったので、父を愛してくれた人、歌舞伎を見に来てくれた人たちが、空を眺めた時に父のことを思い出してくれたら、ありがたいです」と話した。

 祭壇には、昨年11月に撮影された黒紋付き姿の遺影が飾られた。その周りを、07年のパリ公演の際にフランス政府から贈られた芸術文化勲章「コマンドゥール」などの勲章や、3000本の白い菊の花、600本の白いバラの花などが囲んだ。

 関係者によると、団十郎さんは生前、質素を重んじていたことからシンプルな祭壇にしたという。本葬前に団十郎さんの遺骨、遺影を抱いた海老蔵ら家族が、新しい歌舞伎座などゆかりの劇場を車でめぐる案もあったが、海老蔵が「父の魂はもう歌舞伎座を見に行っている」として、目黒区内の自宅から直接、青山葬儀所入りした。

 ▼国文学者の久保田淳氏 般若心経の「色即是空、空即是色」を踏まえて詠んだのではないか。すべての煩悩を超越して、私の魂は永遠に変わらない世界へ行く、という意味が込められている。この世に未練を残していない、大変に穏やかな状態。

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