映画のワンシーンのように…若松監督 拍手でお別れ

[ 2012年10月25日 06:00 ]

出棺の際、拍手で故人を見送る佐野史郎(左端)、井浦新(右端)ら参列者

 12日に都内で交通事故に遭い、17日に多発外傷のため76歳で亡くなった映画監督の若松孝二(わかまつ・こうじ、本名伊藤孝=いとう・たかし)さんの葬儀・告別式が24日、東京都港区の青山葬儀所で営まれた。井浦新(38)、寺島しのぶ(39)ら作品に出演した“若松組”の俳優ら約600人が参列。井浦は「最後の別れになるとは」と涙。寺島は「かけがえのない時間でした」としのんだ。出棺は参列者が拍手で送った。

 反骨の映画監督の幕切れは盛大な拍手だった。出棺は遺族の意向で、監督が気に入っていたギリシャの巨匠アンゲロプロス(故人)の映画「旅芸人の記録」のシーンのように、参列者が拍手で送った。若松監督が生前、息子のようにかわいがっていた井浦も、10年公開の映画「キャタピラー」で主演してベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した寺島も懸命に手を叩き続けた。

 弔辞では、井浦がメモなど持たず、監督のトレードマークだったサングラス姿の遺影の前に立ち、約15分も語りかけた。

 事故が起きる直前の今月12日夜に東京・新宿のそば店で食事。「監督をタクシーに乗せて、見送った背中が最後の別れになるとは考えもしませんでした。見送った数分後に事故に遭われ、痛かったでしょう」。こらえられずに涙で声を詰まらせた。

 6年前、監督に“若松組入り”を直訴する電話をしてから始まった付き合い。08年の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」以来、今年6月に公開された主演作「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」、遺作の「千年の愉楽」(来春公開)など、最近では常連として5作品に出演。監督と俳優としてだけではなく、プライベートでも気が合った。

 そして突然のお別れ。「監督はいつも周りに心の準備をさせてくれない」と嘆いた後、「監督が一番大切にされていた“心”という言葉をしっかりと抱きしめ、前進します」と誓った。

 寺島はフランス人アートディレクターの夫ローラン・グナシア氏(44)と参列し、涙にくれた。「キャタピラー」のほか、「千年の愉楽」でも主演し、思い出はたくさん。「キャタピラーは、(私が)子供が欲しくて1年間仕事を休もうかと思っていた時に台本を見た。監督も事情を知ってたから、(今年9月に)子供が生まれたとき真っ先に電話をくれた」と涙を拭った。

 棺の中の監督は、ベルリン映画祭の後、寺島がプレゼントしたジャケットを着用。「これを着て、いろんな映画祭に行きましょうと話していたのに」と悔しがった。

 ◇主な参列者 佐野史郎、寺島しのぶ、井浦新、坂井真紀、大西信満、奥貫薫、塩谷瞬、高良健吾、満島真之介、崔洋一監督(敬称略)

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