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[ 2009年12月7日 06:00 ]

音楽の楽しさを体現するかのような演奏を披露したミンコフスキとルーヴル宮音楽隊※写真はユニバーサル・ミュージック提供

 彼らが、音楽は楽しむ、楽しませるためにあるという共通の目的意識を持っていることは、私の目と耳にも明らかでした。これこそが、ミンコフスキ率いるルーヴル宮音楽隊のアンサンブルの最大の特徴であり、そして世界中の音楽通を魅了している理由ではないか。少なくとも、私が一瞬にして魅了されたのは、この点だと認識しました。彼らは成熟し完成された楽団です。しかし、もしかすると今をもってなお、子どもの頃のただひたすら音楽を楽しむマインドを持ち続けているのではないでしょうか?

 アンコールは、サプライズが詰まった全6曲。ハイドンのびっくりシンフォニーこと、交響曲第94番「驚愕」では、ピアニッシモ(非常に弱い)から突然、大きな音を鳴らして驚かせる箇所がありますが、最初はまず「無音」でフェイント。次に、楽員全員で、「ワッ!!」と大声。会場を大いに湧かせました。同じくチェンバロ協奏曲より第3楽章「ハンガリー風ロンド」が終わると、ミンコフスキは上手に消えて、私たちは、「えっ?」と不思議に思う。その瞬間に、バスクの太鼓のような長胴のドラムを首から下げた打楽器奏者を伴い、2人で歩きながらラモーの「優雅なインドの国々」より“太陽への祈りの前奏曲”が始まる。最後は、モーツァルト「ハフナー・セレナード」よりロンド。楽員たちがステージから去った後も鳴り止まぬ拍手に、ミンコフスキは赤いポケットチーフを振って「もっともっと演奏したかったよ」と笑顔で応えてくれました。

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2009年12月7日のニュース