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[ 2009年12月6日 06:00 ]

ミンコフスキはルーヴル宮音楽隊を創設し、世界的なピリオド演奏団体に育てた

 まずは、飴色のような深みのある響きをもった弦楽器セクション。コンシェルジェによると、現代オーケストラやヴァイオリニストが使っている楽器にはスチール弦が張られていますが、彼らの楽器の弦はガットと言って羊の腸でできているそうです。過去に聴いた現代オーケストラによるピリオド奏法を取り入れた演奏は、軽やかで聴き易いのですが、個人的にはノンビブラートの弦の音は、ギイギイと引っかかっていて、硬い感じで馴染めないという印象を持っていました。しかし、ルーヴル宮音楽隊の柔軟性に富んだガット弦が紡ぎ出す音は、しなやかで歯切れが良く、聴いているだけで晴れやかな気分にさせてくれたのです。快活さに満ちたそのサウンドは、とりわけハイドンの明朗な旋律にふさわしい、と感じました。時計の針の動きを連想させるリズムを、小気味良く聴かせてくれるのですが、軽すぎないのです。重たさや厚みとはまた違う不思議な安定感は、いったい何なのでしょうか?

 コンシェルジェ曰く「楽団全体のピッチが通常よりも低いからではないか」とのことです。つまり現代オーケストラはどんどんピッチが高くなっていて、チューニングの基準となるA(ラ)の音はだいたい440~445ヘルツくらい。ミンコフスキのルーヴル宮音楽隊は420~430くらいではないかということです。ピッチの高低差は、最新の研究で次第に明らかになってきており、ミンコフスキはもとより、アーノンクールをはじめとするピリオド演奏の大家たちは、いずれも作曲家在世当時の今より低めのピッチを採用しているそうです。
 その音楽隊の創設者でもある指揮者のミンコフスキは、両手のコミカルな動きが独特で、観客のみならず演奏者たちをも楽しませているように見えました。「どうだ!私の音楽を聴きなさい!」というのではなく、「どうぞ存分に楽しんでいってください」と、彼の背中が物語っていたのです。

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2009年12月6日のニュース