根岸吉太郎氏「ヴィヨンの妻」に最優秀監督賞

[ 2009年9月9日 06:00 ]

「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ」の最優秀監督賞受賞を喜ぶ根岸吉太郎監督(右)と浅野忠信

 第33回モントリオール世界映画祭の授賞作品が7日(日本時間8日)、発表され、根岸吉太郎監督(59)の「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」が最優秀監督賞を受賞した。同映画祭では昨年、「おくりびと」がグランプリを獲得しており、アカデミー賞獲得にも期待がかかる。現地入りしていた根岸監督は9日帰国し、凱旋会見に臨む。

 立ち見も出た1500人収容のメゾヌープ・シアターでの授賞式。97年の故市川準監督以来の監督賞を受賞した根岸監督は「メルシー・ボク(ありがとう)」と5回繰り返し「何度お礼を言っていいか分からない。映画が大好きな人々の映画祭で、この映画の第一歩を踏み出すことができた」と喜びを語った。
 太宰治の短編を原作にした「ヴィヨンの妻…」は、夫で道楽の限りを尽くす小説家(浅野忠信)に翻弄(ほんろう)されながらも、明るさを失わない妻(松たか子)の愛を描いた。配給の東宝によると、同映画祭の創設者兼ディレクター、セルジュ・ロジーク氏が松に対して「彼女はスクリーン上で“別の生き物”にひょう変した」と評し、6日(日本時間7日)の公式上映後は演技を引き出した根岸監督にも注目が集まっていたという。
 根岸監督は浅野よりも2日早い3日に現地入り。グランプリを受賞した仏作品「KORKORO」を観賞するなど純粋に映画祭を楽しんでいた。そんな中での受賞に「自分の名前が呼ばれた時は、自分の名前ってフランス語っぽいなあと感じた」ととぼけつつ、「個人賞ですが、日本映画全体の名誉だと思う」と胸を張った。浅野は「自分でも完ぺきと思える芝居を引き出していただいた。自分のことのようにうれしい」と敬意を表した。
 夜には受賞を祝う宴も催され、06年に監督作「長い散歩」でグランプリを獲得し、今回のコンペティション部門で審査員を務めた奥田瑛二(59)が合流。深夜まで祝杯を挙げた。
 滝田洋二郎監督(53)の「おくりびと」は昨年、この映画祭での受賞を皮切りに注目度を上げ、日本映画史上初のアカデミー賞外国語映画賞まで国内外89の賞を獲得。日本作品は2年連続での受賞となり、世界にNEGISHIの名がさらに広まるか。

 ◆根岸 吉太郎(ねぎし・きちたろう)1950年(昭25)8月24日、東京都生まれの59歳。早大卒業後の74年、日活に助監督として入社。78年、「オリオンの殺意より 情事の方程式」で監督デビューし、「にっかつロマンポルノ」を手掛ける。81年の「遠雷」でブルーリボン賞監督賞を受賞。90年代中ごろは映画製作から離れていたが98年に「絆」で復帰。06年の「雪に願うこと」で第18回東京国際映画祭グランプリ、第61回毎日映画コンクール監督賞を受賞。

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