猿之助のよき妻…日本舞踊家元・藤間紫さん逝く

　歌舞伎俳優の市川猿之助（６９）の妻で女優、日本舞踊紫派藤間流家元の藤間紫（ふじま・むらさき、本名喜熨斗綾子＝きのし・あやこ）さんが２７日午後５時２６分、肝硬変による肝不全のため東京都文京区内の病院で死去した。８５歳。東京都出身。猿之助一門には母親的存在で、最期は最愛の夫らにみとられながら息を引き取った。

　猿之助をはじめ、市川右近（４５）ら「澤瀉屋（おもだかや）」の俳優陣を支えてきた“母親”が逝った。関係者によると、猿之助、市川春猿（３８）、市川笑三郎（３８）、市川弘太郎（２５）らにみとられ、静かな最期だったという。猿之助は、白い布団がかけられた藤間さんの体を優しくさすり、別れを惜しんだ。その横で弟子の俳優はじっと立ちすくんだ。
　藤間さんは今年１月１２日、東京・銀座のホテルで行われた「紫派藤間流」の新年会に出席。「着物姿でピシッと元気な様子だった」という。２月中旬に体調を崩して入院。３月１５日には、東京・赤坂にある一門の稽古場で行われた紫派藤間流の名取式にも病院から駆けつけるなど、最後まで藤間流のことを気に掛けていた。猿之助との自宅は長野県の軽井沢にあるが、治療に専念するため、文京区千駄木にある弟子の家に同居する手続きを進めている最中だった。
　昨年３月には、テレビ朝日「徹子の部屋」で、０７年１０月に食道静脈りゅうの手術を受けていたことを告白。「夫が毎日見舞いに来てくれて申し訳なかった」などと笑顔で話していた。
　父は六代目尾上菊五郎の主治医で元日本医大学長の河野勝斎氏。幼いころから舞踊家を目指し、日舞藤間流六代目宗家藤間勘十郎（後の勘祖）さんの内弟子となり、１９４４年に結婚した。
　一方で、１９６０年ごろから猿之助の公演活動を支え、６８年に猿之助が女優の浜木綿子（７３）と離婚すると、実質的なパートナーとなった。８０年代半ばに藤間さんが離婚後、宗家藤間流を離れ、紫派藤間流をつくり、家元に。猿之助は小学生のころから「将来、藤間紫と結婚する」と公言していたとされ、その結婚は００年にようやくかなった。０３年１１月に猿之助が脳梗塞（こうそく）で倒れると、自身の舞台出演と並行し、リハビリを支えた。