これでいいのだ!赤塚ワールド、今の若者も共感

[ 2008年11月1日 08:58 ]

発売が相次ぐ赤塚不二夫さんの関連本やCD、DVD

 「天才バカボン」などで知られ、8月に72歳で亡くなった漫画家赤塚不二夫さんの関連本や、作品を新たにアニメ化したDVDなどの発売が相次ぐ。バカボンのパパをはじめとするキャラクターを、高度成長期の時代の気分と関連づける研究もスタート。日本のギャグ漫画の始まりとされる“赤塚ワールド”への再評価の動きが広がっている。

 「おそ松くん」「もーれつア太郎」など名作の一部を集めた「赤塚不二夫WORLD」(ゴマブックス)、世間の価値観から自由に生きるバカボンのパパの人生哲学を今を生きる若者に指南する「これでいいのだ14歳。」(福田淳著、講談社)…。十一月は評論家中条省平さんの「天才バカボン家族論」(講談社)が刊行予定で、関連本の出版がめじろ押しだ。
 アニメ制作会社ゴンゾロッソは過激な女の子が活躍する「へんな子ちゃん」を初アニメ化。4月からネットの動画共有サイト・ユーチューブで公開し、30―60代を中心に10月末までに約10万回のアクセスを記録。DVDも発売した。9月にはミュージシャンが赤塚さんにささげるCDも発売された。
 1日夜にはフジテレビ系で追悼特別番組「これでいいのだ!! 赤塚不二夫伝説」を放送。味谷和哉プロデューサーは「キャラクターの破天荒な行動も、赤塚さんの人を喜ばせたいという無類の優しさの表れ。若い人も、その笑いの裏にあるヒューマンな部分に引きつけられるのでは」と話す。
 京都市の京都国際マンガミュージアムでは今春から赤塚漫画の調査、研究を始めた。研究顧問で漫画評論家の呉智英さんを中心に、赤塚漫画と時代との関係などについて議論している。
 呉さんは「赤塚さんが認知されだした1960年代後半に漫画の笑いの質が変化した」と言う。文脈で笑わせる「ユーモア」に代わって、ジャズの即興演奏のように突発的な笑いに人を巻き込む「ギャグ」が60年代の若者の心をとらえ、それが赤塚漫画の誕生と結び付いたという見方だ。
 貧しくてもみんなを元気にしたおそ松くん、日本人を既成概念から解放したバカボンのパパ、反骨精神があり学生運動の中でもてはやされたニャロメ―。人々の意識が大きく変わった高度成長期の空気が、赤塚漫画にどう影響したか。研究の成果は、同ミュージアム主催の巡回展覧会などで披露する。
 「これでいいのだ14歳。」の編集者入江潔さんは「価値観の根本をぶっ壊す赤塚漫画のギャグは、今の社会に窮屈さを感じる若い世代にも、もっと自由な心で生きていいんだというメッセージとなって伝わるのではないか」と話している。

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2008年11月1日のニュース