【内田雅也の追球】画竜点睛を欠いた勝利

[ 2026年5月17日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3─1広島 ( 2026年5月16日    甲子園 )

9回途中から登板し、クイックモーションを使わず投球するドリス
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 前夜に続き、9回の二盗に驚かされた。ただ今回の阪神は守っている側だった。

 完封ペースできていた先発・村上頌樹が坂倉将吾に適時打を浴びて3―1。なお2死一、三塁で村上降板、ラファエル・ドリスが救援登板した。同点の走者となる一塁には俊足の代走・辰見鴻之介が起用されていた。

 打者エレフリス・モンテロへの初球、「え?」と声が出た。ドリスは左足を高く上げて投げ、辰見は悠々二塁を陥れたのだ(二盗)。同点の走者を易々と得点圏に進める不用意な投球に見えた。

 だが、試合後、ドリスは「打者勝負」を強調した。「2アウトだったのでバッターにしっかりと集中して。(モンテロは)とてもいいバッターなので、どっち道このバッターを抑えないとアウトは取れないし、勝ちにもつながらないというのが自分の中にあったので」。走者無警戒で打者に集中していたというのだ。

 確かに、この考え方はある。クイックモーションで投げ、球威や制球が落ちるのを嫌って、足を高く上げて投げる。打者を打ち取ればいい、というわけだ。クイックが苦手な投手が多い大リーグでよくみられる。

 監督・藤川球児が2月のキャンプ中、新外国人投手のクイック投法について「日米で文化が違いますから」と話したのを覚えている。日本ではクイックが必要との意味だと理解していた。ただ、日本での野球生活の長いドリスは日本野球を知っている。クイックもできるし、けん制はうまい。それでも使わなかった。

 2死二、三塁となり、モンテロにはカウント3―1から左翼へライナー性の痛打を浴びたが、福島圭音が捕球して試合終了となった。同点走者が一塁では長打警戒で深かった守備位置を、一打同点で単打警戒の前進にかえていたので事なきを得た。ただ画竜点睛を欠いた感覚は残った。

 当欄で何度も書いてきたが、勝った試合後こそ振り返り、「なぜ勝てたか?」を考えたい。

 クイックをしなかったドリスは本当にそれで良かったのか。試合後、最後にベンチ裏から出てきたのはドリスと通訳、そして捕手・坂本誠志郎だった。話し合っていたのかもしれない。

 先発出場4連敗中だった坂本は4月26日広島戦(甲子園)以来20日ぶりの勝利だった。勝ってなお考える。内省的な姿勢が見えた。 =敬称略= (編集委員)

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