【馬淵史郎 我が道28】70センチ動く 勝利に近づくための0・1秒

[ 2026年3月29日 07:00 ]

甲子園練習で投手陣の調整を見守る
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 明徳義塾が目指す野球は、常にいろんなことを考えて取り組む細かい野球だ。パワー重視とは違う。高知の山奥という立地、環境もあるから、中学から注目されているような大型の選手はなかなか来ないということもあるが、まずは「動ける」ということに重きを置いている。

 野球は0・1秒の差で決まるスポーツだ。塁間(27メートル431)を足が速い選手は4秒前後で走る。1秒でだいたい7メートル。0・1秒で70センチ動くことになる。70センチも違ったら、アウトとセーフはそこで変わる。1回のまばたき、一瞬の球の握り直し。そこで得点や失点、勝敗までが動いてくる。普段の練習から0・1秒にこだわることが、勝利に近づくための鉄則だ。

 走者を置かずに、ゆっくり捕って、ゆっくり投げて、ミスなくできましたという練習では本番では通用しない。いかに実戦に即した形で守れるか。0・1秒の重み、怖さを感じてこそ、守備は上達する。だからこそ、守備練習ではやかましく言うよ。

 攻撃のパターンは限られている。走者を置いた状況では普通に打つか、バントするか、盗塁か、エンドランか、このくらいだろう。でも、守備のパターンは無数にある。走者一塁でどんな打球が飛ぶか。内野ゴロなら併殺が取れるかどうか。外野への長打コースなら、カットの中継がどこで入って、相手の進塁をどこまで防ぐか。あらゆる状況を想定して、野手は自分で最善の動きを判断しないといけない。練習でできなかったことを、試合でできるわけがない。だから守備練習に費やす時間は必然的に増える。これで終わり、ということはない。

 投手については、一番重視するのはバランスだ。フォームのバランスがいい子が体力をつけたら伸びる。投手も野手も投げ方がぎくしゃくしているのだけは直せない。投げ方が良ければ、130キロ台でも十分。パワーやスピードは体が出来上がれば、バランスのいいフォームから出てくる。右投手なら右の爪先からリリースまで下半身から順番通りにつながっているかどうかを見る。バランスが良ければ、コントロールだってついてくるのだ。

 内野でうまい選手を置く順番は遊撃―二塁―一塁―三塁の順だと思っている。センターラインに関わる遊撃、二塁は要になるのはもちろんだが、一塁の守備能力が低いと、リスクは高い。ワンバウンドの後逸は試合の流れを変えることが多い。

 打撃は守備練習をしっかりやる中で、自然と理にかなった動きに近づく。02年(平14)夏に全国制覇したチームは冬から春にかけて、ほとんど打撃練習はしなかった。ノックはむちゃくちゃやった。その結果が夏の甲子園、6試合で7本塁打。打撃は数打ちゃ当たるというものではない。守備と打撃は表裏一体だ。

 ◇馬淵 史郎(まぶち・しろう)1955年(昭30)11月28日生まれ、愛媛県八幡浜市出身の70歳。三瓶高―拓大。83年に社会人の阿部企業で監督に就任、86年に都市対抗初出場、日本選手権で準優勝。90年から明徳義塾の監督に就任、02年夏の甲子園で優勝。監督として甲子園通算39回出場(春17回、夏22回)は歴代1位。甲子園55勝は歴代4位。23年には日本代表監督としてU―18W杯優勝を果たした。

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