「退場!」させる覚悟 U18野球W杯で世界をジャッジした唯一の女性審判員が「史上初」の甲子園に挑む

[ 2025年9月21日 09:51 ]

三塁塁審を担当する佐藤審判員 (撮影・松永 柊斗)
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 沖縄で開催された「ラグザス presents 第32回WBSC U18ワールドカップ」に出場した野球の高校日本代表は決勝で米国に敗れ、準優勝で大会を終えた。世界を相手に貴重な経験を積んだのは横浜(神奈川)の阿部葉太主将(3年)ら選手だけではない。埼玉高野連に所属する佐藤加奈審判員(38)は大会唯一の女性審判員として15試合(球審4試合)をジャッジした。

 「みんなが国を背負って出場しているので、本当に誇りを持ってプレーしていると感じました。その中でジャッジさせてもらえて、ここでしか味わえないものがあった。審判員の仲間も大会の中で絆が深まりました。日本とは異なる野球、戦い方、アンパイアリングを体感できました」

 電光掲示板には「SATO」の文字。2メートルを超える長身選手もいる海外選手同士の対決をジャッジするクルーに佐藤審判員がいた。米国、韓国、ドイツなど12チームが参加した大会にはメキシコやパナマ、そして開催国の日本などから計13人の審判員が派遣された。大会で唯一の女性審判員だった佐藤審判員は正確性に長けた日本審判の強みを発揮。球審では一貫したストライクゾーン、TV放送に合わせたイニング間の時間管理を含めたゲームコントロールで高評価を得た。「みんなが納得できるジャッジを心がけた」と自信につなげていた。

 初の世界舞台を経験したことで新たな課題も得た。同じ野球でも国ごとに競技に対する文化、考え方は異なる。特に注意を払うべきはラフプレーだ。審判員は火種を察知して取り除き、試合をコントロールしていく責務がある。球審を務めた試合ではアウトのタイミングで本塁に突入した走者がスライディングすることなく「タックル」のような形で捕手と衝突したことがあった。普段活動している日本の高校野球では注意に留まるが、国と国がぶつかる国際大会では試合の秩序を守るために「退場!」を宣告することが求められるケースだった。さらにもう一段階上のゲームコントロールを実現するために英語力向上の必要性も痛感。「もっと、もっと勉強しないといけない」と今までにない景色を見た。

 埼玉の中学校で教員をしながら、主に高校野球で腕を磨く日々を送る。高校野球の甲子園大会に女性初の審判員として立つという大志がある。「私が立つことでいろいろな道が開けると思う。女子野球をしている選手、審判員の夢を背負う気持ちで頑張りたい」。選手のプレーを支えるザ・サード・チームの使命を負う佐藤審判員。沖縄の地で決意を新たにした。(元NPB審判員、アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

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