阪神・坂本誠志郎が導いたVへの軌跡「6・17」の言葉で再びチームは一つになり走り始めた

[ 2025年9月8日 05:01 ]

セ・リーグ   阪神2―0広島 ( 2025年9月7日    甲子園 )

<神・広>岩崎(右)と抱き合って喜ぶ坂本(撮影・須田 麻祐子)
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 マスク越しに見える仲間が強く、頼もしく、つながって見えた。阪神・坂本が導いたVへの軌跡。背負ってきた責任感が大きな歓喜となって身にしみた。

 「たくさん試合に出て経験できたことは自分にとって大きいこと。個人的にはFAで残って監督を胴上げしたいと思っていたので」

 圧倒的強さでセ・リーグを制した阪神に危機があったとすれば、連敗が今季ワーストの7まで伸びた6月17日のロッテ戦だろう。

 その夜、甲子園の一塁側ベンチには鬱屈(うっくつ)とした空気が充満していた。前日までチームは西武、楽天相手にビジター6連敗。流れを変えるべく戻ってきた本拠地でもロッテのプロ初先発・木村の前に4回まで1得点と苦戦し、5回以降は小刻みな継投の前に打線は沈黙した。

 中でも主軸2人のフラストレーションはピークに達していた。3番・森下は3打数無安打に終わり、4番・佐藤輝は今季初の4三振。自身へのいら立ちがあらぬ方向に向いていることを察知したのがこの日スタメンを外れてベンチから戦況を見守った坂本だった。

 「みんなフラストレーションがたまっていました。あの日、(森下)翔太、輝が審判のストライクゾーンの判定に対して態度に出していたんです。僕にはそれがピッチャーと戦ってない、審判と戦っているように見えました」

 敗戦後、慣例となっているスタンドへの全員での一礼を終えてベンチへ戻ると、坂本はすぐに動いた。野手の精神的支柱・糸原の元に向かい「糸さん、ちょっと僕からみんなに話をしていいですか」と聞いた。うなずく先輩の了解をもらうと「ちょっといいかな」とベンチ裏にいた野手陣に声をかけると坂本は感じたこと、思ったことを熱くなり過ぎずに淡々と伝えた。

 「裏に来て(言いたいことを)言うのはいいと思う。でも、それが仲間に見えているところだったり、プレーをしている時にあからさまに出して、っていうのは俺は良いことないと思うから。そこじゃなくて、俺たちは結果で勝負せなあかんし、これだけ負けているのは誰も面白くない。ただ、俺たちはそれも含めて試合に勝って結果を出して評価される。連敗しているけど、何とか明日頑張って結果を出そう」

 真っ先に糸原に“仁義”を切ったのも当然ながら理由がある。「糸さんも僕と同じことを思っていたと思う。でも毎日試合に出てない中で立場上、言いにくい部分もある。スタメンを見てもチカ(近本)や(中野)拓夢はそんなタイプじゃないし、(大山)悠輔も背中で示すタイプ。それなら僕が言うべきかなと」。

 そしてもう一つ、捕手としての思いもあった。「審判が“こいつら”と思ってうちのピッチャーに被害をこうむったらそれもチームにとってはマイナス。糸さんも代打で数少ない打席で、1球で不利をこうむることもある。梅野さんも僕も(捕手という)立場上、判定に対しては表に出さないようにしてる」。

 ナインを集め、発言した時間は5分にも満たなかった。「負けた時に言うのは本当は嫌なんです。響かないから」。当の本人のためらいとは裏腹にナインの胸には確かに響いていた。優勝が目前に迫った9月上旬のある日、佐藤輝は振り返った。「(坂本)誠志郎さんも常にチームのことを考えていて、そういう中心選手の言葉はみんな思うところがあったと思います。またそれでみんなが“頑張っていこう”“同じ方向を向いてやっていこう”というのは確認できた。そういう時間でした」。森下も「打ててないのもあって相当たまっていて…。(坂本が)踏ん張っていこう、と」と気持ちを一つにした。

 翌18日、チームは8―1でロッテに快勝し連敗を7でストップ。森下が先制打を放ち、佐藤輝はダメ押しの2ランと若き大砲たちは力強く結果で示した。以降、チームは1度も3連敗以上することなく歓喜の瞬間を迎えた。「6・17」は、勝ち続けて頂点まで突き進んだ虎が“立ち止まった”最初で最後の日。坂本の言葉で再びチームは一つになり、走り始めたのだった。(遠藤 礼)

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