【内田雅也の追球】心が消耗する前に

[ 2025年6月14日 08:00 ]

交流戦   阪神2―3楽天 ( 2025年6月13日    楽天モバイル )

<楽・神>3回、近本は内野安打を放つ(撮影・平嶋 理子)
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 4連敗。しかも4試合とも先制しながら逆転で敗れた。阪神監督・藤川球児の言う「試練」は東北に来ても続いていた。

 この日6月13日は1991年、神宮で球団ワースト記録(当時)の10連敗を喫した日である。あの頃は何をやってもうまくいかなかった。後に暗黒時代と呼ばれた。あの日は木曜日。今回は13日の金曜日、仏滅か。

 ただし当時と今では戦力も試合内容も雲泥の差である。この夜も9回表に則本昂大を攻め、1死二、三塁として森下翔太、佐藤輝明に回した。一邪飛、右飛とあと1本が出なかった。「形を作る、というのは大事なことなので」と藤川も「一打同点、逆転」の好機をつくった粘りは評価した。

 打線はよく見極め、よく粘った。5回で降板に追い込んだスペンサー・ハワードには102球を投げさせた。過去4試合の1イニング平均投球数は15・7と少ない投手である。

 特に2点を先制した3回表には32球を投げさせた。1死から近本光司が8球粘って内野安打で出た。中野拓夢の打席で近本は偽走するなど4球のけん制球を放らせた。中野は6球目の低めチェンジアップを引っ張って二ゴロ進塁打を転がした。この2死二塁から森下翔太が左前先制打。さらに佐藤輝明四球の打席で森下は二盗。ボークも誘った。こうして大山が左前適時打を放ったのだ。
 当欄で何度も書いてきたが、野球は「消耗戦」である。球数管理がより厳格になってきた今では「いかに投げさせるか」がより重要になる。

 その点で選球眼は武器となる。ボール球スイング率(O―Swing%)で中野がセ・リーグ1位の24・8%、さらに5位に近本、7位に大山、10位に森下と4人が20%台で10傑入りしている=成績は12日現在=。

 逆に村上頌樹も4回裏、33球を投げさせられ、逆転を許した。先頭の浅村栄斗に8球粘られ四球を与え、5~8番の左打者に3安打と犠邪飛とたたみかけられた。

 競り負け、逆転負けが続けば、精神力も消耗する。猛虎党だった阿久悠の小説『球心蔵』で、阪神の「善戦疲れ」を案じるセリフがある。「善戦もしょせんは負けや。それが続くと善戦づかれが出てくる。どこかで善戦払いをせんと――」

 優勝候補の今、善戦という言葉は似合わない。ただ、心が疲れてくる前に、まずは一つ、勝ちきりたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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