甲子園Vの「落とし穴」から息切れしない健大高崎に進化…打率・647の秘密は「ホワイト部活」にあり

[ 2025年6月8日 17:41 ]

関東大会で打率・647と打ちまくった石田(撮影・柳内 遼平)
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 第77回春季高校野球関東大会は5月25日にノーブルホーム水戸で決勝が開催され、健大高崎(群馬)が7―2で専大松戸(千葉)を下し、2年ぶり4度目の優勝を果たした。

 昨秋の群馬県大会を制し、秋の関東大会は準優勝。今年は選抜で4強入りの好結果を残すと、春の関東大会で頂点に立った。昨秋の新チーム始動以降、公式戦敗戦は横浜への2敗のみ、と勝利を重ねている。

 ただ、公式戦に勝ち続けるデメリットもある。強度の高い試合数が増えると心身の疲労蓄積は避けられない。だが健大高崎ナインは関東大会でハツラツとしたプレーが光っていた。「息切れしない」秘密を探ってみた。(取材 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

 春の戦い方はチームによって異なる。公式戦でしか味わえない成功体験、公式戦でしか得ることができない自信をつかむために「ガチ」のチーム。新戦力発掘や、数カ月後に迫った夏に備えて戦力を「隠す」チームもいる。健大高崎は「勝ちながら新戦力をテストする」の二兎(にと)を追った。

 昨夏に左肘じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を受けた左腕・佐藤龍月(りゅうが=3年)は関東大会で左翼手としてスタメンに定着し、初戦の東海大菅生(東京)戦では決勝の適時二塁打を放つなど外野手起用にメドが立った。さらに140キロ右腕・石垣聡志(1年)は関東大会で2度の先発マウンドを経験するなど、群馬県大会から新戦力のテストを続けた上で試合にも勝ち続けた。

 4強入りした選抜から群馬県大会の初戦までわずか22日。主力選手は常に公式戦を戦っている感覚だが、疲れの色は見えなかった。なぜか。青柳博文監督に聞いた。

――例年、選抜出場校は春季大会で心身ともに疲労が重なり「息切れ」するケースが多い。今年の健大高崎にはそれが見えない。
 「去年からの1年間を通してそういうこと(疲労の蓄積)がないように練習メニューを組んでやっていますね。去年(選抜で)優勝したその後の反省を生かしながらやっている。選手たちと相談しながら休みを増やしたりしているので、そんなに疲労はないと思います。1週間に1回は休みですし、選手が“疲れている”と言えば軽めの練習メニューにしています。選手たちの状況を見ながらですね」

――春の疲労は夏にも影響する。
 「そうですね。去年の経験から夏に向けた強化メニューに取り組むよりも、良いコンディションで試合に臨んでいくことの方が大切と学びました。昔より夏が暑くなっていることも一因ですね」

 選抜で初の日本一となった昨年も、春の関東大会に出場していた。だが、「甲子園の春夏連覇」を目標に掲げて迎えた夏の群馬大会では2度も敗戦の危機を迎えた。経験も実力も申し分なく、隙なしに見えたチームがハマった「蓄積疲労」の落とし穴だった。その反省から、練習メニューはより選手の疲労に応じた強度に設定するようアップデートが施された。

 選手にも話を聞いた。関東大会では1番打者として17打数11安打の打率・647をマークした石田雄星外野手(2年)に「元気印」の秘訣を直撃した。

 「自分は体が硬くて人一倍ケガが多いんですけれど(練習の中で)体のケアに充てられる時間が多く設けられているので、コンディションを保った状態で試合に臨めています」

――春の選抜が終わってすぐに春季大会。それでも疲れはないか。
 「体が疲れている、動かないっていうのは正直ないです。1年で一番キツいのは冬のトレーニングの時期。朝起きたら“今日も練習が始まるのか…”という感じの時もありました。(1年間のトータルで)体のことを考えて休みを設けられているので凄く良い環境です」

――健大高崎は平日の全体練習が午後7時頃に終わり、翌日の夕方まで全体練習はなく、寮は消灯時間も設定されていない「ホワイト部活」としても知られる。それも一因か。
 「基本的に全体練習が終わったら自由時間ですね。自主練習もするんですけど自分は漫画、アニメが好きなので(自由時間に)結構見ています。最近は漫画だと“アオのハコ”、アニメだと“ソードアート・オンライン”が好きです(笑い)」

 「甲子園優勝」の落とし穴から得た経験。年間の稼働を見据えた練習量のコントロールでコンディションを維持し、そして確保された自由時間で心をリフレッシュ。心身両面でケアの時間が確保されていることが「疲れ知らず」の秘密だった。

 新戦力は経験を積み、従来の主力選手は心身ともに万全の状態で迎える群馬の夏。2度目の日本一を狙う健大高崎がチームとしての完成度を高めている。

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