元甲子園球児が西武・仁志打撃コーチに弟子入り 指導には西武に通じる貧打解消の極意があった

[ 2025年2月22日 05:31 ]

<西武南郷キャンプ・福井記者打撃体験> 仁志コーチの指導を受けながらティ打撃をする福井記者(撮影・篠原岳夫)
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 近年はSNSなどの普及で、大リーグからさまざまな技術論が広まっていく日本野球界。打者が安易に取り入れる流れに苦言を呈すのが、新任の西武・仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチ(53)だ。県岐阜商時代に外野手として甲子園出場経験がある西武担当の福井亮太記者(29)が、宮崎・南郷キャンプで“弟子入り”。貧打解消のキーマンとして招かれた男の、タイプに合った打撃練習法など高度な指導を体感した。

 秋山、清原、デストラーデ…。近年の貧打を嘆き、黄金期だった80~90年代の強力打線を懐かしむファンは多いはずだ。5年連続でチーム打率.240以下、2年連続Bクラスに沈む要因でもある打線の再建を託されたのが仁志野手チーフ兼打撃コーチ。連日、居残り練習まで付き合う熱血指導は、どんな内容で強化を狙っているのか。記者が実際に打撃指導を受けた。

 野球人であれば誰もが本塁打に憧れる。記者も打球角度を上げるため、ティー打撃でアッパースイングを意識したが、打球は思うように飛ばなかった。仁志コーチは「打つ前に体が伸び上がっているから、インパクトで力を入れているつもりでも力が抜ける」と分析。飛ばすことを意識しすぎた結果、左打ちの記者は体重が左足に残り、目線も上がって右腰が伸びた状態になり、ボールに力を伝えられていなかった。「インパクトの前に余計な力を入れないこと。そこで100%を出そうとすると、当たる前に100%が出る。そこからは力が落ちるしかない」と、今まで考えたこともない打撃理論に衝撃を受けた。

 体重を逃がすことなく、ボールにぶつける練習法は左股関節の体重をスイング時に右股関節に一気に移すことだという。さらに「置きティーにあるボールの先に、同じボールが3球並んでいることをイメージしてみて」と言われた。股関節と、3球を振り抜く意識でスイング。体が伸び上がる悪癖が改善され、打球に力強さが出た。

 身長1メートル70でパワーもない記者はチームでは小柄な滝沢、児玉と同じタイプだという。仁志コーチは同タイプに必要なことを「極力、小さな動きで確実に当てる。投手の球速をうまく利用し、芯に当てて打球速度を出す考え方が大事」と強調。「大谷翔平の打球角度は凄く上がっている。でも、日本人選手の多くは、その角度で上がったらスタンドに入らない」と続ける。身の丈に合ったスイングをすることが、何より大事だった。

 近年はゴロよりもフライを打つ方が安打の確率が上がるという理論の「フライボール革命」や、長打を狙うための「バレルスイング」など米国の一流選手たちの情報がSNSなどで簡単に手に入る時代。便利な時代だが、仁志コーチは「一概にスイングをどうにかしようと思っただけで打撃は絶対変わらない。はやりの打ち方をすれば、みんなが打てるようになるというのは錯覚。そんなことはあり得ない」と警鐘を鳴らす。「その時に“これだ”と信じてやってしまうと、実は2、3年後に誰もやっていないこともよくある。安易にはやりに飛びつくのは危険」と、取捨選択の重要性を説いた。

 1軍経験が少なく、発展途上の若手ほど流行の打法を試すことが多いという。近年のチームでも、自身のタイプとは違うスイングをしていることで結果につながっていない現状がある。「その人の良さを最大限に発揮させるようにするべき」と仁志コーチ。まずは自分を知ること。単純で、基本的なことだが、西武打線がかつてのような輝きを取り戻すためには一番、大事なことかもしれない。 (福井 亮太)

≪昨季最下位の打撃陣再建へ 仁志コーチ「可能性感じる」≫
 新加入の仁志コーチの使命は、3年ぶりの最下位だった昨季、いずれもリーグワーストだったチーム打率.212、60本塁打、350得点の打線の再建。全ポジションでレギュラー白紙だが「人によって課題はもちろん違うし、課題のレベルも違うけど可能性はみんなに感じている。これからが楽しみ」と目を輝かせる。佐藤龍、西川、長谷川らレギュラーに定着できていない若手が多い現状には、「やり尽くして、もう無理だという選手はいない」と伸びしろに期待。キャンプでは率先して打撃投手も務めるなど精力的だ。

≪2年連続パ最少の本塁打数≫
 西武打線の近年の低迷ぶりは数字でも明らか。過去10年のチーム打撃成績では18、19年の2連覇時は本塁打がいずれもリーグ2位の196、174本。山川(ソフトバンク)が2年連続本塁打王を獲得した。打率も2年ともリーグ1位で19年は森(オリックス)が首位打者。以降は下降線で、チーム本塁打は23年90本、昨年は球団ワーストの60本でいずれもリーグワースト。昨年の個人最多は中村剛ら3人の7本塁打で、2桁本塁打不在は球団初の屈辱。打率.212も球団ワーストだった。

 ▽フライボール革命 15年ごろから大リーグを中心に浸透してきた打撃理論。ゴロよりもフライの方が安打の確率が上がるとされる。長打になりやすいという打球速度と角度の組み合わせは「バレルゾーン」と呼ばれ、速度158キロ以上で角度26~30度、174キロなら16~45度。本塁打となる確率も上がるなどフライを重視する打者が増加し、アッパー気味のスイングが増えて本塁打と同時に三振が激増した。

 ◇仁志 敏久(にし・としひさ)1971年(昭46)10月4日生まれ、茨城県出身の53歳。常総学院、早大、日本生命を経て95年ドラフト2位で巨人入りし、96年に新人王。07年に横浜(現DeNA)に移籍、10年には米独立リーグでプレーし、同年6月に現役引退。NPB通算1587試合で打率.268、154本塁打、541打点。17年の第4回WBCで内野守備走塁コーチ、21年から3年間はDeNAで2軍監督。

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