【内田雅也の追球】高度な連係と実戦勘

[ 2025年2月14日 08:00 ]

<阪神宜野座キャンプ>投球練習を終えて言葉をかわす栄枝(左)と才木(右)を笑顔で見つめる藤川監督(撮影・北條 貴史)
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 阪神監督・藤川球児の話は独特で時に難解である。まず当たり前の言葉を口にしない。Xという答えまでに、ABCから始まってDEFどころかOPQなんて話も交えて話す。Xが何かわからない時もある。

 この日のブルペン。投球練習後の才木浩人と栄枝裕貴の会話に藤川も加わった。経験の浅い栄枝に「データとして持っているものでやろうとするのは大切だが、このレベルの投手(才木)になると、それ(データ)を上回るボールも出てくる」と助言した。「配球面でも見えないところや構えのちょっとしたしぐさとか」の重要性を伝えた。DEFあたりのたとえか。そして「あうんの呼吸と言うか、実戦が近づいてくると目に見えない、あの18メートル44の間の連係がある。二遊間にしてもそう……」とXを示した。

 キャンプが進めば、実戦で必要な選手間の目に見えない連係が高まっていくということか。

 1980~90年代に活躍したペドロ・ゲレーロ(ドジャース―カージナルス)は「新聞記者は私の意味したことでなく、私の言ったことを書く」と嘆いた。言葉尻ではなく意味を書きたい。

 野球ではバッテリーやキーストンコンビをはじめ、投手と野手、さらにグラウンドとベンチ……と連係が重要なカギを握る。それも言葉ではなく、目やしぐさでわかり合えるまで高めたい。

 通算237勝の野口二郎はマウンドから中堅手・富松信彦に合図して守備位置を動かし、実際そこに打球が飛んで試合終了という連係を見せた。1943(昭和18)年、西鉄軍(後の西鉄とは無関係)当時の実話だ。観戦していた作家・虫明亜呂無は興奮し<魔術のように思えた>と『名選手の系譜』で書いている。

 藤川も現役時代に同じ離れ業をやってのけた。2010年9月7日の中日戦(スカイマーク=現ほっともっと)。1―0の9回表2死一、二塁、荒木雅博の「抜けたか」と思えた右中間ライナーを中堅手・浅井良が難なく捕球していた。

 事前にマウンドからベンチの外野守備コーチに合図を送っていた。当時のコーチが「球児は緊迫した場面では一球一球ベンチを通じて守備位置を動かす。常識外の指示もある」と話していた。
 高度な連係である。あす15日から練習試合も始まる。藤川は「乱れや流れを感じ取れるまでいけるか」と実戦勘も注視していた。 =敬称略=(編集委員)

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