【内田雅也の追球】奮起への「野球は2死から」

[ 2024年4月8日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1-3ヤクルト ( 2024年4月7日    神宮 )

<ヤ・神>3回1死三塁、二ゴロに倒れた中野(撮影・須田 麻祐子)
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 近本光司三塁打で1点を返した3回表1死三塁、続く中野拓夢の二ゴロで「ゴロ・ゴー」ならば同点だった――などというのは結果論でしかない。まだ序盤、しかも上位打線で無理をする必要などない。

 堅実を好む監督・岡田彰布はキャンプから「(打球が外野に)抜けてからでええ」と、ギャンブル性の高い走塁練習はあまり行わなかった。だから、この日も当然「ゴロ・ストップ」だった。

 近本自重の2死三塁から、3番に起用した前川右京は二ゴロに倒れ、同点機は去った。

 阪神は今季、2死で走者が得点圏にいる際の成績が極めて悪い。この日もこの前川二ゴロ以下、中野拓夢四球、前川二ゴロ(以上5回表)、梅野隆太郎四球、木浪聖也三振(以上6回表)、近本二ゴロ(9回表)と4打数無安打。通算22打数1安打、打率・045しかない。2死得点圏で打ったのは開幕3戦目、今季初勝利を呼んだ森下3ランだけ。つまり、2死からは何も起こらないという淡泊な現状がある。

 大リーグの打撃成績に「2死後打点」がある。凡退すれば攻撃終了となる2死から、適時打や本塁打を放った価値をたたえる数字である。

 今季、大リーグで目下単独トップに立っているのは鈴木誠也(カブス)で6打点をあげている。11打点はナ・リーグ3位で、半分以上を2死からの打席でたたき出す勝負強さを見せている。
 阪神今季の2死後打点は先に書いた森下3ランと木浪ソロの4点だけ。適時打は出ていない。

 「野球は2死から」という言い古された警句がある。あの「2死から」は攻める側には「最後まであきらめるな」という激励になり、守る側には「最後まで油断するな」の注意となっている。

 2死からでも、つないでつないで得点していった昨季の粘り強さを思い起こしたい。8回裏2死二塁から三ゴロを後逸する適時失策で3点目を献上した佐藤輝明への叱咤(しった)にもなる。

 チーム得点圏成績も62打数12安打、打率・194とセ・リーグで唯一1割台である。昨季はリーグ最高・268だった。

 ただ、7日付当欄でも書いたように、勝負強さ(または弱さ)の正体は解明されていない。勝負弱かった打者(チーム)が突然変身することもあると期待をこめて書いておく。 =敬称略= (編集委員)

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