WBC宿命のライバル・韓国代表ってどんなチーム? 室井昌也氏が分析、打線は「韓国のイチロー」が中心

[ 2023年1月17日 05:00 ]

韓国代表の李政厚外野手
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 侍ジャパンにとって宿命のライバルといえる韓国代表。第5回WBCでは1次ラウンドで同じB組に入り、3月10日に東京ドームで激突する。出場20チーム中、最も早く4日に発表された今大会のチームはどのような特色があり、注目選手は誰なのか――。「韓国プロ野球の伝え手」として20年以上にわたって韓国プロ野球(KBO)を取材し続けるジャーナリストの室井昌也氏(50)がライバル国を詳細に分析した。(構成・鈴木 勝巳)

 打線は「韓国のイチロー」と称される24歳が中心になる。室井氏も「一人だけずばぬけた存在」という李政厚(イ・ジョンフ)。KBOリーグで2年連続首位打者&昨季MVPに輝き、19年プレミア12、21年東京五輪など既に代表経験も豊富だ。元中日の李鍾範(イ・ジョンボム)氏の長男で、今季終了後にはポスティングシステムで大リーグ移籍を目指す。

 「選球眼が良くハーフスイングが少ない。バットがピタッと止まる。昨季は打率・349と率も高く、守備も良くて足もある。完璧な選手です」。所属のキウムでは3番だが、室井氏は2番と予想。昨季24盗塁の1番・朴海旻(パク・ヘミン)から中軸につなぐ役割を担い、打線の核となる。ちなみに朴海旻は21年東京五輪で、侍ジャパンの伊藤が「追いロジン」で話題になった際の打者だ。

 捕手は大黒柱で35歳のベテラン・梁義智(ヤン・ウィジ)。母が韓国出身のエドマン(カージナルス)も主力として金河成(キム・ハソン=パドレス)と大リーガーで二遊間を組む。「外野も層が厚く、野手は代表経験のある選手が多い。試合で浮足立つことはないでしょう」。4番の朴炳鎬(パク・ビョンホ)は昨季35本塁打のパワーを誇る。15年プレミア12で大谷から詰まりながらも安打を放った。この「詰まりながら」もポイントの一つだ。

 室井氏が韓国の選手を取材すると、誰もが「東京ドームは凄くやりやすい」と口をそろえるという。広めの球場が多い韓国より「誰もが“狭く感じる”と言います。フリー打撃で柵越えを連発して、気持ち良く試合に臨むようです」。パワー満点の打者が詰まりながらも打球をスタンドに運ぶ。侍ジャパンにとっても脅威となる。

 投手陣は「過去のWBCなどの国際大会と比べ、先発投手は名前やタイトル歴、信頼度などは落ちる」(室井氏)という布陣になった。大リーグ所属投手はおらず、絶対的エースが不在。昨季15勝、防御率2・11、224奪三振で2冠に輝いた23歳右腕の安佑鎮(アン・ウジン)が、高校時代の暴力行為の問題で選出されなかった。この大きな穴を埋めるべく、早めの継投が重要になるのではと室井氏は予想する。

 金広鉉(キム・グアンヒョン)、梁(ヤン)ヒョンジョンら代表歴豊富な投手がいる一方で「先発は若い投手が多い。例えば打者1巡目まで投げて、相手打者が慣れてきたら交代させる。どんどんつなぐ感じになるのでは」。重要になるのが救援陣で、セットアッパーの鄭又栄(チョン・ウヨン)、守護神の高祐錫(コ・ウソク)の存在だ。

 昨年10月、侍ジャパンの栗山英樹監督が韓国プロ野球を視察。その目の前で登板したのが、所属のLGでもゲーム終盤を締める役割の2人だった。鄭又栄は1メートル93の長身ながら横手投げの右腕。最速157キロで長い腕をしならせ「9割がツーシーム。制球よりスピードで圧倒するタイプで、特に右打者は非常に嫌がる」。栗山監督は「どこに来るか分からない投手は怖い」と警戒していたという。

 高祐錫は昨季42セーブでタイトルを獲得。150キロ台後半の直球で押すだけでなく、ここぞで変化球を交えるなど大きく成長した。21年東京五輪は準決勝・日本戦の8回に投げ、3失点で敗戦投手に。リベンジに燃えている。1月に結婚したが、相手は李政厚の妹。図らずも「義兄弟」となった24歳と同い年の2人が、投打で韓国代表をけん引する存在なのは間違いない。

 56歳の李強喆(イ・ガンチョル)監督は初めて韓国代表の指揮を執る。KBO歴代4位の通算152勝を挙げた元名投手。19年からKT監督を務め、投手コーチなどで豊富なキャリアがあり、室井氏は「21年にはKTを優勝に導くなど、手腕を評価されている。投手出身で継投が非常に巧み」とした。

 采配面では犠打などを多用する一方で「自分の色を出そうとはしないし、高圧的な部分がない」。選手との対話を大切にし、野手の早出特打にも顔を出してコミュニケーションを欠かさないという。

 チームは3月9日の初戦オーストラリア戦に注力しているという。「現時点では日本戦よりオーストラリア。ここで勝たないと1次ラウンドを突破できない」と室井氏。指揮官らは5日から訪豪して視察した。過去2大会は1次ラウンドで敗退。白星発進で勢いに乗って日韓戦を迎えたい、が青写真だ。

 ≪李強喆監督、日本戦に自信「面白い試合ができる」≫韓国代表はこの日、ソウル市内で記者会見した。李強喆監督は日本戦に向けて「誰もが名前を知る選手たちがいる。素晴らしいチームだが、自分たちは面白い試合ができる」と闘志を燃やした。

 会見には主力3選手も同席。金河成は「全試合で勝ちにいく」と宣言。35歳のベテラン捕手でチームをリードする梁義智は「結果で示す」と気合を入れた。高祐錫はメダル獲得を逃した東京五輪を振り返り「大会後、さらに自らを追い込んだ。今回はよりいいパフォーマンスができるはず」と雪辱を期した。東京五輪でも主将を務めた代表常連の金賢洙(キム・ヒョンス)が主将に決まった。

 ≪韓国系米国選手代表入り VS日系ヌートバーあるぞ≫現役大リーガーは3選手入った。金河成はパドレスの正遊撃手でダルビッシュの同僚。パイレーツ・崔志万(チェ・ジマン)は、レイズ時代は筒香の同僚だった左の大砲で、メジャー通算61本塁打を誇る。そして初の韓国系米国選手としてカージナルス・エドマンが代表入り。21年に二塁でゴールドグラブ賞に輝いた走攻守そろった内野手で、初の日系日本代表となったヌートバーとはカ軍で1、2番コンビを組むことが多かった。エドマンの夫人は日系人で、因縁深い日韓戦となりそうだ。

 ◇室井 昌也(むろい・まさや)1972年(昭47)10月3日生まれ、東京都出身の50歳。02年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。著書「韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑」(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、韓国では06年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当している。KBOリーグで記者証を発行されている唯一の外国人。ストライク・ゾーン代表。

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