ダルビッシュがWBC出場意思を表明した理由 「後輩に伝えていけることをやっていかないとダメ」

[ 2022年12月6日 21:10 ]

パドレスのダルビッシュ(AP)
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 パドレスのダルビッシュ有投手(36)が5日(日本時間6日)、侍ジャパンの一員として来年3月の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する意思を自身のツイッターで明らかにした。日本人大リーガーの出場表明はエンゼルスの大谷翔平投手(28)に続き2人目。MLB担当の奥田秀樹通信員(59)がダルビッシュの決断の理由に迫った。

 16年春季キャンプ。当時レンジャーズのダルビッシュから、オフに当時日本ハムの大谷と日本でトレーニングをした話を聞いた。

 当時日本ハムの栗山英樹監督に依頼され、まだ21歳だった大谷に会った。トレーニング方法やサプリメントの摂取について、蓄積してきた知識を伝え、「6、7回(合同自主トレを)やってるんじゃないかな、一緒に。もっとかな」という。

 09年に出版された「ダルビッシュ有の変化球バイブルの変化球バイブル」(ベースボールマガジン社)を始め、ダルビッシュが現役生活を通して熱心に続けているのは、自身が得た知識や経験を次の世代の選手に伝えていくことだ。プロアスリートは競争相手を打ち破って、トップレベルにのし上がることで、巨額の報酬を得る。自己中心的で当たり前だと思っていたが、ダルビッシュの考え方は全く違っていた。

 「プロ野球選手が残していく結果って、あくまで本人の自己満足の部分があると思うし、野球界のことを考えたときに、個人成績はそこまで大きく発展にはつながらない。誰々が20勝してサイ・ヤング賞を取った。すごいね、すごいねって、ファンが喜ぶことではあるけれども、それが野球界の発展につながるかというとそうではない。発展を目指すなら選手個人個人が、後輩に伝えていけることをやっていかないとダメだから」。

 この姿勢はその後も一貫していた。いつも日本の野球界を気にかけていた。今、ダルビッシュはメジャーで10年以上プレーし、36歳になっても第一線で投げ続け、米球界でも敬意を払われる存在である。そして7年前21歳の大谷を託した栗山監督が、今回は侍ジャパンで一緒に戦って欲しいと申し入れた。戦力としてももちろんだが、ダルビッシュと一緒にプレーすることで、若い代表選手たちが多くを学び、成長できると考えているだろう。

 今季リーグ新62本塁打を記録し、ヤンキースからFAになった外野手ジャッジの例を見ればわかるように、メジャー選手にとってはFA資格を得る前のシーズンの成績はかなり重要だ。次の契約に大きく影響するため、投手としてWBCに出ることはかなりリスクが高い。

 だがダルビッシュは、今大会の出場を了承した。「発展を目指すなら選手個人個人が、後輩に伝えていけることをやっていかないとダメだから」。自己満足ではなく、球界の発展を優先する。当時から考え方はぶれていない。(MLB担当・奥田秀樹通信員)

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