【あの甲子園球児は今(1)東洋大姫路・安井浩二】唯一決勝サヨナラ弾 全力に生きスポーツ用品会社で要職
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第104回全国高校野球選手権大会(甲子園)は、6日に開幕する。聖地で幾多のドラマを生んだ、かつての球児たちはどうしているのか。今に迫った。
◇ ◇ ◇
「決勝戦のサヨナラ本塁打」――。長い夏の甲子園大会の歴史において今も唯一無二の存在だが、安井浩二は「他に誰か出てきてくれないかなぁ」と笑った。1977年の決勝戦。東洋大姫路と東邦の一戦は、1―1のまま延長戦に突入した。膠着(こうちゃく)状態にあった投手戦に、決着をつけたのが安井だった。延長10回2死一、二塁から「バンビ」の愛称で大会の注目選手となった1年生右腕・坂本佳一の直球を右翼ラッキーゾーンまで運んだ。大会史上初の決勝戦でのサヨナラ本塁打。東洋大姫路に深紅の大優勝旗をもたらした一撃は、今も安井しか成し得ていない偉業だ。
「二塁走者が俊足の田村敏一でしたので、センター前に打てば優勝できると思っていました。自分ではミート中心にセンター返ししたつもりが、知らず知らずのうちに力が入り強振してしまった。振り遅れた分、数センチ差し込まれて、ライトへ飛んだのでしょう」
勝負の綾となったのは、2ボール1ストライクからの4球目だった。際どい外角のスライダーはボールの判定。打者有利のカウント3―1となり、坂本から投じられたのがストレートだった。
「僕の中で四球の選択肢はなかった。打てる球は全部打つんだと」
見逃せばボール気味の真っすぐを捉えると、一塁を回ったところで線審がグルグルと手を回しているのを確認した。一塁を空過しかけて、慌てて踏みなおした。一日3時間に及ぶノックなど苦しい練習に明け暮れ「もう、明日から野球をしなくていいんだ」と思えた。ダイヤモンドを一周して、最後は両手を天に突き上げ、両足で本塁を踏んだ。「これで終わったぞ」という気持ちからだった。
劇弾への伏線があった。10回2死二塁から、直前の3番を打つ松本正志が敬遠された。
「非常にうれしかったことを覚えています。東邦戦は1、3回の好機で凡退していた。“よし、もう一度、チャンスをもらえた。俺が決めたる”と」
決勝戦は意気揚々と打席に向かったが、実は3回戦の浜田戦でも6回の好機に松本が敬遠されていた。
「その時はめちゃくちゃ頭に血が上って(笑い)。満塁からセンターへ2点タイムリーを打ったんですが、打った後も相手の一塁手に“ピッチャーになめるな言うとけ”って。今ではそれも笑い話になっていますけどね(笑い)」
ただ、栄光の2文字で彩られた甲子園大会を思い出すことはほとんどない。コロナ前まで毎年開催された同級生との新年会も、話題は厳しかった練習や梅谷馨監督に怒られた思い出ばかり。むしろ、兵庫大会で市尼崎に勝って優勝した時の方が「強烈にうれしかった」という。
大型チームと期待されながら、新チームで臨んだ前年秋は県大会で滝川に敗退。選抜には出られなかった。過酷な冬を乗り越え、春の県大会、近畿大会を圧倒的な力で優勝したが、夏の大会直前にベストメンバーで臨んだ市尼崎との練習試合には2連敗を喫した。
後日談がある。その試合で指揮を執ったのは梅谷監督ではなく、田中治副部長。田中副部長が「このまま勝ち続けていたら、夏に足をすくわれる。あんたに負けさせるわけにいかんから、わしが行って負けてくるわ」と梅谷監督に進言し、予定通り、連敗した。
「僕らはずっと負けていなかったので、あの敗戦で一気に気が引き締まりました」
もちろん、安井をはじめとする選手たちはそのやりとりを知らない。「兵庫で優勝できて重圧から解放された」。大久保勉部長も含めた首脳陣には明確な役割分担があり、互いが互いをリスペクトしていた。そんな恩師たちとの出会いがあったからこそ、甲子園で優勝できたと思う。
“優勝捕手”として将来を嘱望されて明大へ進学したが、2年生の終わりには合宿所から退所した。3、4年生の2年間は自称「幽霊部員」。昼夜が逆転するような、すさんだ生活を送った。
「全国制覇したこともそうですが、どん底の2年間がその後の人生で大きなプラスになりました。2年間も怠けに怠けて、もう同じことはできんやろう、と」
就職を前に、自分に何ができるか?と考えたとき、真っ先に浮かんできたのが野球だった。82年に総合スポーツ用品の株式会社エスエスケイへ入社。周囲からは「東洋の安井をもっと前面に出せ」と勧められたが、「自慢話をするのは好きじゃない」と首を縦に振らなかった。遠回りした分、地道に、愚直に、野球と向き合った。販売促進、中日ドラゴンズ担当、グラブや打撃マシンの企画担当など、野球畑ひと筋。過去にすがることなく、今を全力で生きてきた結果、現在は同社取締役事業推進本部長の要職にある。
数年前からは同社が、伝統あるスポーツブランド「hummel」の日本での商標を買い、オリジナルブランドとして展開。そのことをきっかけに、バスケットボールやサッカーなどにも携わるようになった。「スポーツの良さを改めて知ったというか、スポーツってエエなぁと」。柔和な表情を浮かべ、取材を締めくくった。
=敬称略=(森田 尚忠)
◇安井 浩二(やすい・こうじ)1959年(昭34)12月8日生まれ、兵庫県出身の62歳。東洋大姫路では2年春と3年夏に甲子園出場。全9試合で4番を打ち33打数14安打の打率・424、1本塁打、11打点。明大を経て82年に株式会社エスエスケイに入社。現在は同社取締役事業推進本部長。
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